《論説》笠間、牛久が日本遺産に 認定機に地域活性化を

©株式会社茨城新聞社

地域の歴史的魅力や特色を生み出す有形・無形の文化財を通して地域活性化を図るため創設された「日本遺産」に、茨城県の笠間市などの「かさましこ〜兄弟産地が紡ぐ“焼き物語”」と、牛久市などの「日本ワイン140年史〜国産ブドウで醸造する和文化の結晶〜」が認定された。県内では旧弘道館のある水戸市が2015年、栃木県足利市の足利学校跡、岡山県備前市の旧閑谷(しずたに)学校、大分県日田市の咸宜園(かんぎえん)跡とともに「近代日本の教育遺産群-学ぶ心・礼節の本源」として認定されて以来の朗報だ。認定を機に本県の文化を通した地域の活性化や観光振興に弾みがつくとみられる。笠間、牛久両市の関係者と喜びを分かち合うとともに、今後の施策展開に期待したい。

認定に当たっては地域の歴史的魅力や特色を通じて文化や伝統を語る「ストーリー」が重要視された。笠間市は峠を挟んで近接する栃木県益子町と歴史的に深いつながりがあることから、今回初めて共同で申請。「焼き物文化」を軸にしたストーリーで、笠間市は「笠間焼と益子焼の歴史や現在の魅力、文化財などを活用し、回遊性のあるコースを設定し、観光客を呼び込みたい」と認定に意欲を見せていた。

笠間焼は江戸中期、箱田村(現同市箱田)の久野半右衛門が近江国(滋賀県)信楽の陶工を雇い、陶器を焼き始めたのが起源。益子焼は笠間焼を学んだ陶工が始めたもので、笠間焼と益子焼はいわば「兄弟産地」。両市町は本県などとともに陶芸文化の振興に力を入れ、「かさましこ」という言葉で両産地のつながりの深さをアピールし、独自の陶文化の魅力を伝えていた。認定に当たり審査委員会は「益子と笠間が連携して陶芸と地域の振興を進めていこうとする意欲を感じることができる。民芸運動をてこにリノベーションを図ってきた両地域の勢いを感じる物語である」ことを評価した。

牛久市は山梨県甲州市とともに3回目の申請だった。「日本ワイン」を軸に日本初のシャトー「牛久醸造場」の創業者の神谷傳兵衛(でんべえ)や、フランスでワイン造りを学んだ土屋龍憲ら、国産ワインの醸造に情熱を注いだ人物に重点を置いたストーリーで認定を目指していた。牛久シャトーは18年12月からレストランなどが休止していたが、今年1月に運営を担う第三セクターを設立。今月20日からレストランなど2店舗がリニューアルオープンすることになっており、再開に花を添える。

認定に当たって審査委員会からは「日本ワイン醸造の歴史が分かりやすくまとまっており、魅力的で簡潔したストーリーになっている。牛久市と甲州市が協力して日本におけるワイン造りと普及の歴史をストーリー化しようとする姿勢」が評価された。牛久市は地元でワイン造りを復活させる計画も進めており、「日本遺産になれば牛久シャトー再生の大きな起爆剤になる」と期待していた。シャトーの旧醸造場施設などの文化財を巡るイベントや日本ワイン関連商品開発などを通して牛久のワイン文化再生に期待したい。

今回は本県から笠間、牛久両市以外に、「本場結城紬(つむぎ)」の結城市が栃木県小山市とともに申請していた。残念ながら認定はされなかったが、ユネスコ無形文化遺産登録からちょうど10年を迎えるのを機に、結城紬のさらなる振興と地域活性化にも期待したい。