メクル第466号 感動呼ぶ美しい庭を 造園業 久保田礼雄さん

刈り込みばさみでサツキをせん定する久保田さん=長崎市小江原1丁目

 木を植えたり、庭石を置いたりして家の庭を造(つく)り、その植木や盆栽(ぼんさい)の手入れなどをしています。「庭師(にわし)」や「植木屋さん」とも呼(よ)ばれます。
 植木の里として知られる長崎市の古賀(こが)・松原地区で生まれ育ちました。東京の大学を卒業後、家業の造園(ぞうえん)業「雄光苑(ゆうこうえん)」を継(つ)ぎたいという思いが芽生え、26歳(さい)の頃(ころ)に帰郷(ききょう)。松の手入れなどを得意とするオヤジ=父哲雄(てつお)さん(61)=に弟子入りしました。大学生の頃などに何度か手伝ったことがあり「大変だけれど、やりがいのある仕事」と感じていました。

刈り込みばさみ(右の2本)など庭木を整えるのに使う道具

 ◆植物は生き物

 植木は生き物。枯(か)らさずに大切に育てたいと思っています。だから私(わたし)たちは、雨が降った翌朝(よくあさ)などに「よか雨やったね」とあいさつを交わしています。
 木の植え替(か)えや、枝葉(えだは)を切って形を整える「せん定」には適(てき)した時季があります。今は松などの手入れのため、市内外の個人宅(こじんたく)を回っています。小さなはさみで松の新芽を丁寧(ていねい)に切り取り、かっこいい形になるよう気を配ります。サツキなどを刈(か)り込(こ)みばさみでシャカシャカシャカと素早(すばや)く刈ると、枝葉が軽やかに宙(ちゅう)を舞(ま)います。
 駐車場(ちゅうしゃじょう)のスペースを広げ、フェンスを設置(せっち)するといった「エクステリア」と呼ばれる建物以外の外構(がいこう)工事もしています。

久保田さんらが完成させた個人宅の庭=長崎市内

 ◆オヤジから雷(かみなり)

 「なんばしよるとか」。時々、オヤジから雷(かみなり)が落ちます。作業のやり方が危険(きけん)だと注意されるときです。高さ3メートル以上もある三脚(さんきゃく)の上での作業は、バランスを崩(くず)して転落(てんらく)しないよう気が抜(ぬ)けません。木に乗(の)り移(うつ)るときは、枝が腐(くさ)れていないか見抜(みぬ)く力も必要です。重い木や庭石などを2人以上で運ぶときは、上げ下ろしの合図をして息を合わせることが大切です。
 仕事は体力勝負です。夏は暑さに耐(た)えなければなりません。毛虫やハチに用心していても時々刺(さ)されて、猛烈(もうれつ)なかゆみや痛(いた)みに苦しむこともあります。

父哲雄さん(左)にこつを教わりながら盆栽をせん定する礼雄さん=長崎市松原町、雄光苑

 ◆仕事に手応(てごた)え

 作業の合間に交わす家主との会話の時間は、私たちにとっても大切なひとときです。家主が自分の庭にこだわるのは、心を癒(い)やす大切な空間だからです。庭の造り次第で、家のイメージも変わります。家主の要望に沿(そ)いながら、専門(せんもん)業者として提案(ていあん)する力も重要です。
 一緒(いっしょ)に働いている義理(ぎり)の兄と力を合わせ、個人宅の庭造りを一から手掛(てが)けたことがあります。常緑(じょうりょく)ヤマボウシとモミジなどの落葉樹(らくようじゅ)を組み合わせて常(つね)に季節感を演出。デザインは和風と洋風を織(お)り交ぜて提案しました。おしゃれな庭だと家主も喜んでくれて、仕事に手応(てごた)えを感じました。

 ◆ヒップホップ

 実は副業でダンスのインストラクターをしています。14歳からダンスを続けていて、市内外3カ所でヒップホップを教えています。本業とは無関係のようですが、ダンスで磨(みが)いた感性(かんせい)を庭造りに生かせると考えています。将来(しょうらい)、若者が好むポップな庭にも挑戦(ちょうせん)したいです。
 造園業はとても奥深(おくぶか)い世界。一人前の庭師になるには10年はかかるといわれています。この道7年目の私はまだ半人前。オヤジのように木が成長し、どんな形になるか見通す力を付ければ、もっと美を追求できます。感動を呼(よ)ぶような庭造りを目標に、目の前の仕事に全力で向かい腕(うで)を磨いていきたいです。

© 株式会社長崎新聞社