オフコースを飛躍させた勝負曲「Yes-No」小田和正は言った、これでどうだ! 1980年 6月21日 オフコースのシングル「Yes-No」がリリースされた日

シングル「さよなら」に続くトップ10ヒット「Yes-No」

It was 40 years ago today.
40年前の今日、1980年6月21日、オフコースのシングル「Yes-No」がリリースされた。オリコンで最高8位(3週連続)を記録し、この年の初めに最高2位とブレイクを果たした「さよなら」に続き、オフコース2曲めのトップ10ヒットとなった(いずれも小田和正作)。

「さよなら」がリリースされたのは前年1979年の12月1日。実は「さよなら」と「Yes-No」との間には、もう1枚シングルが存在する。1980年3月5日にリリースされた「生まれ来る子供たちのために」である。1979年の10月20日にリリースされた、オフコースが正式に5人になって初めてのアルバム『Three and Two』からのシングルカット(これも小田和正作)であった。

ブレイクの後だからこそ多くの人に聴いて貰えるチャンスだという小田の強い希望でシングルになり、確かに後にスタンダードになったのだが、当時は「さよなら」がまだヒット中で、しかも既発曲ということもあり、オリコンでは最高48位に留まった。

次のシングルこそがオフコースの今後を決める曲となるはずであった。

じっくりと練られ、計算された、オフコースの勝負曲

「Yes-No」のレコーディングは1980年の3月3日から4月21日まで行われた。この時カップリングの鈴木康博の曲「愛の終わる時」も録音されているが、「さよなら」の大ヒットも受けて、十分な時間をかけてレコーディングされたことがうかがえる。

微かなフリューゲル・ホルンのソロからドンッと楽器が加わりラウドになる劇的なイントロ、そこから歌い出しへのまさかの転調、「♪ 今なんて言ったの?」疑問形から入る歌い出し。このくだりで自分の本心を隠しながら「♪ 好きな人はいるの?」相手に質問しつつ自分の様に答えをはぐらかしてもいいと勧め、シンメトリーを見せる歌詞。

そしてやはりサビの「♪ 君を抱いていいの 好きになってもいいの」という歌詞のインパクト。ここまでがもやっとしているからこそサビが生きるのだ。

ちなみにこのサビの歌詞は、前年1979年の「愛を止めないで」の「♪ いきなり君を抱きしめよう」がオフコースらしくないと言われたことへの反発もあって「らしくないならこれでどうだ!」と書いたと後に小田も認め、「当時の歌詞の中でも一線を越えてた」「だからみんなのアンテナに引っ掛かったんだよ」と語っている。

今まで以上に5人のバンド感をタイトに出したアレンジを含め、練りに練られて作られていることは十分に伝わってくる。やはりこの曲はヒットすべくしてヒットしたのだ。

フリューゲル・ホルンのパートが無く、いきなりドンッとイントロが始まるこの曲の別ヴァージョンが収められたアルバム『We are』(1980年11月)も初めてのオリコンNo.1アルバムとなり、いよいよオフコースはシーンのトップに躍り出るのであった。

「Yes-No」は正にオフコースを飛躍させた重要な一曲となったのである。

オフコース解散後、小田和正のセルフカヴァーで大胆に変貌

「Yes-No」はオフコースが5人から4人になっても、そして解散後の小田和正のソロでも、他のオフコースの代表曲がしばしばセットリストに入らない中、コンスタントにライヴで歌われてきた。

そんな中、1993年9月リリースの小田のシングル「風の坂道」のカップリングで、「Yes-No」が従来のエイトビートとガラッと異なるシャッフルのリズムでセルフカヴァーされた。

“LOOKING BACK” と銘打たれたセルフカヴァーはこの年から始まった。オフコースの曲を、今ならばこれ、というリリース当時とは異なる表現方法で再提示する試み。その中でも「Yes-No」はかなり大胆に変化していた。その現役感覚、意欲には敬意を払いつつも、率直に言ってしまうと僕もついて行けてなかった。

セルフカヴァーは『LOOKING BACK』というアルバムにまとめられ1996年2月にリリース、見事オリコン1位を獲得する。

こうなるとライヴでも当然変化が起こる。90年代後半、小田和正のライヴで演奏される「Yes-No」は “LOOKING BACK” ヴァージョンになった。曲の後半がオリジナルに戻るヴァージョン(1997~98年だったか?)は、その瞬間の観客の盛り上がりを鮮明に覚えているのだが、それ以前(95年?)には “LOOKING BACK” だけのヴァージョンもあった気がする(記憶が定かではないのだが…)。

いずれにせよ2000年のツアーで「Yes-No」は早々とオリジナルヴァージョンに戻っている。“LOOKING BACK” ヴァージョンはライヴでは短期間で終わった。

セルフカヴァーから23年、オリジナルアレンジに回帰

しかし2002年、メガヒットとなった小田和正のオールタイムベスト『自己ベスト』に収められた「Yes-No」は “LOOKING BACK” ヴァージョンであった。ライヴとは異なるこのヴァージョンが定着するのかと思ったが、それから14年後の2016年にリリースされたオールタイムべストCD3枚組『あの日 あの時』で「Yes-No」はオリジナルに近いヴァージョンに戻った。

ライヴ音源をベースにしたこのヴァージョン、イントロはオリジナルのフリューゲル・ホルンからソロでは一時期サックスになっていたが、ここではストリングスになっている。

小田本人も、やはり大会場のライヴではエイトビートが盛り上がる、かといって今更スタジオでオフコースの様に録音するのは違うなと思ったと語っていた。考えた末がこのライヴ音源をベースとしたエイトビート復活だったのだろう。ともあれ、これでCDでも「風の坂道」でのカップリング以来、実に23年振りに、「Yes-No」はオリジナルに近いアレンジに回帰したのだった。

40年も経てば曲にもいろいろある。それでも「Yes-No」が変わらぬ瑞々しさを保ちライヴで盛り上がっていることは本当に素敵なことだと思うのだ。

今月3日、オフコースの全てのシングルを収めた『コンプリート・シングル・コレクションCD BOX』がリリースされた。40年前にヒットした「Yes-No」のシングルヴァージョンが聴ける音源は、今はこれしか無いそうである。

カタリベ: 宮木宣嗣

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