糖尿病予備軍70% 長崎・離島の砂糖文化、新上五島町が突出

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血液中ヘモグロビンA1c濃度5.6%以上の人の割合

 長崎県内の離島地区の住民は、県本土地区と比べて「糖尿病予備軍」の割合が高い。中でも新上五島町が突出している。背景には、砂糖を多用する食生活などがあると指摘されている。講習会などを通じ住民の健康向上を目指す町の取り組みを取材した。

 「体重が標準でも『かくれ肥満』の人もいる。脂肪が多いか、筋肉が多いかチェックすることが大切」。新上五島町有川郷の有川総合文化センターで1月に開かれた町主催の健康講座。約20人の参加者を前に、町職員の保健師がスライド画像を示して体重や体脂肪率などについて説明した。

成人病や健診データなどについて解説した健康講座=新上五島町有川郷、有川総合文化センター

 2016年度に特定健診を受けた町民約1800人へのアンケートを基に、夕食後の間食も国や県の平均より多いことも示した。
 グループワークでは、参加者が2班に分かれて意見交換。「好きなお菓子や肉を我慢し、食べた分は運動する」「間食の代替品は、同じような内容で糖分の低いものを選ぶ」など、健康を維持するために日頃から注意していることなどを紹介し合った。
 有川地区の食生活改善推進員を務める同町七目郷の上原照子さん(68)は「自分自身が糖尿病予備軍と言われたこともあり、人に伝えるだけでなく自分の健康状態を知るために参加した。合併症の怖さを学び、生活習慣の大切さを考えた」と語った。
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 県によると、16年度に40~74歳で社会保険と国民健康保険の健診を受け、糖尿病予備軍とされる「血液中のヘモグロビンA1cの割合が5.6%以上」ある人の割合は県全体では49.5%。これが離島自治体(対馬、壱岐、五島、北松小値賀、新上五島の5市町)では55.2%と、5ポイント以上高い。そして、新上五島町だけで見ると、その割合は70.3%と跳ね上がる。
 なぜ、このような数値となるのか。
 江戸時代に海外貿易の窓口だった長崎から小倉にかけての旧長崎街道沿いには、砂糖や外国由来の菓子が多く流入。本県では甘い味付けの食文化が根付いたとされる。
 五島列島などでも、伝統食のかんころ餅や、煮付けなどといった料理に砂糖を多用する傾向があるという。町健康保険課の担当者は「全国的にはあまり使われないのではないかと思うが、天ぷらや魚のすり身揚げなどに砂糖を入れる地区もある」としている。
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 業種や職種別で見た場合、漁業者ら肉体労働に従事する人たちは、缶コーヒーなど加糖飲料で水分補給する傾向が強いことも指摘されている。
 町内の漁業男性(47)は「未明に起床し、買い置きした缶コーヒーを飲むのが習慣。喫煙とセットになっている感覚で、昼間の作業中に差し入れでもらうことも多い」。昨年の検診後、コレステロール値が高いことを指摘され、甘いコーヒーから微糖やブラックに変えたところ、数値は改善したという。
 運動習慣がない人の割合も高いとされる。18年度に特定健診を受けた町民約1900人を対象にした調査で、「1回30分以上の運動習慣がない」と答えた人は62.4%で、県平均の60.6%、国の59.8%よりも高い。公共交通機関がバスだけで便数も限られているため、マイカー利用が多く、その分歩く機会が少ないのだという。
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 町はこうした状況を受け、13年度から地道に事業所を巡り、食を含めた健康指導を実施している。1時間から1時間半かけて加糖飲料に含まれる砂糖の量や、しょうゆの適切な使用量などを紹介。普段の生活に合わせてイメージしやすい説明を心掛けているという。
 県上五島病院の医師らと連携し、町内全域を巡って講話する「健康道場」も開催。検診や啓発イベントに参加した町民にポイントを付与し、ためた点数によって商品券を贈る特典制度も取り入れている。
 県は「健康づくりは個人だけの問題ではない。栄養成分を表示するなど、地域の飲食店とも協力し環境を整備していくことが大切」と指摘。町は「今後も若年者や各種団体の働き盛りの人がいる場所に出向き、広報啓発を続けていきたい」としている。

健康保持の工夫などについて意見交換する健康講座の参加者