JAや道の駅が続々とECを開始。アフターコロナにつなげるデジタルトランスフォーメーションの兆しとポイントとは?

新型コロナウイルス(COVID-19)の対応が全世界で広がる中、今後の社会像につながる動きも活発化しています。そのひとつが、事業のデジタル化の兆しです。

外出自粛や、小売店等の人が集まる施設の休業などを通じて、大きな影響を受ける事業者が知恵を絞り、急ピッチでデジタルへの対応を行っています。

デジタルトランスフォーメーションの最初の一歩が始まった

事業のデジタルへの取り組みは、「デジタルトランスフォーメーション」とも呼ばれています。経済産業省がまとめたデジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)を見てみると、

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

と定義されています。デジタルトランスフォーメーションは、ビッグデータやAI(人工知能)の活用など、上を見ればきりがありませんが、その最初の一歩は、インターネット通販(EC)の活用や、クラウドサービスを活用したテレワークによる働き方改革だといえます。

実際に、外出自粛期間でのECの売上が、前年同月比で3.5倍を超えた阪急百貨店の例 などを見ても、需要が高まっていることがわかります。

この波は、地方の中小事業者も同様で、デジタルへの対応というと、よくわからないということで二の足を踏んでいた事業者も、否が応でも対応しなければならないということで、様々な取り組みが始まっています。

クラウドファンデングを活用し1億円以上を調達

CAMPFIREEプロジェクトページより引用

農業協同組合(JA)のひとつ、岐阜県のJAひだは、新型コロナの影響で出荷先がなくなったブランド和牛「飛騨牛」の新しい販路として、クラウドファンディングを活用しました。

出荷先がなくなり、倉庫にストックされ続け、廃棄せざるを得ない状況になってしまうと、牧場経営にとっても危機をもたらすということで、ひとりでも多くの方のもとへ届けようと、新しい取り組みとしてスタート。

その結果、約1億1千万円もの支援を集めることに成功しました。この成功の裏にあるのは、地域内連携です。

JAひだを中心とする生産者チーム、飛騨牛のお肉屋さん、地元の3つの金融機関、WEB販売につよい民間企業、そして行政が連携し、取り組みを大成功に導きました。

道の駅のweb接客で遠方から集客へ

接客にテクノロジーを活用する事例も出ています。編集部で実際に体験した道の駅しかべ間歇泉公園 の事例のように、web接客も徐々に拡がっています。

商品をweb動画を通じて紹介するものや、instagramのライブ配信を活用した商品紹介なども広がっています。

ローカルメディアと連携し、新しい販路を実現

ヤッチャ!記事ページより引用

地域内連携でユニークな事例となっているのが、宮崎県日南市です。日南市は豊かな漁場を活かした海産物と、南国のシンボルともなっている高級フルーツ・マンゴーが有名です。

海産物を取り扱う「港の駅めいつ」と、マンゴーなどの農産物を扱う「JAはまゆう」。どちらもが、宮崎県日南市のローカルメディア「ヤッチャ!」と連携し、ECサイトを開設。インターネットに強みを発揮する若者チームと連携し、新しい販売チャンネルに挑戦しています。

ECサイトは開設することがゴールではなく、いかに情報発信し、認知を高めていくかが重要であることを考えると、情報発信を得意とするローカルメディアとの連携は相性が良いといえるでしょう。

今までは考えられなかった両社のコラボレーションキャンペーン も生まれており、地域に新しい可能性を生み出しています。

ポイントは、自分たちのお客様は誰かを徹底的に考えること

本格的なデジタルトランスフォーメーションと比較すると、まだまだ始まったばかりとはいえ、従来考えもしなかったという領域で、直接販売をしたり、直接思いを伝えたりしていけるということは大きな変化につながっていくといえるでしょう。

そこでポイントとなってくるのは、改めて「自分たちが届けたい相手は誰か=誰がお客様なのか」を考え抜くということではないでしょうか。

従来であれば、生産の場面と販売の場面が切り離されていたり、訪れた人に販売すれば良いとなっていた場面も多いはずです。しかしECは、直接訴えかけることができる分、メッセージがぼんやりしてしまったり、適切なタイミングで届かなければ購入につながっていきません。

そこで、「誰がお客様なのか」を徹底的に考え、どう届けるかを試行錯誤するところからスタートし、その結果を踏まえて、事業や商品を磨き上げていくということが必要でしょう。

その際に、従来では行われていなかった地域内連携などを通じて、新たな視点を入れながら進めていくことが重要だといえます。

これは一過性のものではなく、継続することで大きな変化につながっていくはずです。

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