プロ野球がついに開幕 無観客試合で想定される選手の「袋叩き」 すぐそこにある危険

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6月19日、多くのプロスポーツの先陣を切る形でプロ野球が開幕しました。3ヶ月も待ちわびたファンたちはこの日が来るを指折り数えていたに違いないでしょう。ただし、完全な形ではなく、無観客での開幕です。これまでは歓声で聞こえなかったものが、聞こえてくるようになるでしょう。

そこにあるのは、果たして新しい”楽しみ”だけでしょうか。

無観客で開幕したプロ野球は、超満員の大歓声がないため確かに寂しいものです。けれども、仕方のないことですし、この中で新しい楽しみかたを見つけていく方がよいのも事実。これまで、わずかにしか聞こえなかった打球音や、スライディングの音が圧倒的にクリアに聞こえてきて、プロの迫力を生々しく感じられます。これは、テレビやラジオ各局も「音」にこだわっているため、集音マイクの性能も数も昨年以上になっているのも一因です。

ファンにとって嬉しいのは、プレイの音ももちろんですが、試合中の選手の声が聞こえるということ。これにより、臨場感が圧倒的に増し、女性ファンのなかにはこの声にキュンとくるという人たちも現れはじめています。

しかし、私が懸念するのは、この「声が聞こえすぎる」ということ。

真剣勝負のプロ野球、白熱すればするほど、選手同士の声かけも激しくなることが予想されます。その先には、一般の人が聞くと暴言にもとれてしまうような発言が、テレビやラジオからはっきりと流れてしまうことになるのです。激しい声かけや檄を飛ばすのは、環境や関係性などがあってのもの。しかし、その土壌を知らない人たちの耳にも、簡単に届いてしまうことになります。そうなると、発言した言葉だけが環境や関係性から切り離され、一人歩きをはじめ炎上のタネになってしまう可能性があるのです。

私たちはこれまでも、どこかのローカルルールが白日のもとに晒された途端に、世間から袋叩きに合う様子を何度も見てきました。その多くは、たしかに現代にはそぐわない古い感覚や慣習だったかもしれません。しかし、中には世間一般と一律で語れないだけで、その世界にとって大事だったものも存在していたはずです。

たとえばエラーをした若手に、先輩選手が「何やってんだ! ぶっ飛ばすぞ!」と叫ぶ声の、言葉だけを切り取られてしまったら。その2人の関係性を知っていれば、気にすることではないものだったとしても、ヒステリーな油が注がれてしまうと、燃え上がってしますのです。

燃え上がらせる側は、こうしたことが起こると「それを発言しなくても野球はできる」という論調になるでしょう。本当にパワハラに当たるようなものは、批判されてしかるべきであると考えます。しかし、そうでないローカルできちんと成立しているコミュニケーションまでもが、不用意に表に引きずり出されて失われてしまう危険もあるのです。(文◎Mr.tsubaking)

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