大化け銘柄はどう探す? 個人投資家すぽさんが重視する「成長・ビジネスモデル・割安」

兼業から資産10倍を達成し、専業投資家となったすぽさんの投資法は、成長・ビジネスモデル・割安の3点が重要。商品や市場に成長力があり、ビジネスモデルに優位性がある銘柄を、少し安くなるタイミングを待って買うのが基本戦略です。前回に引き続き、その詳細について話を聞きました。


成長率20%を期待できる銘柄に絞り込む

――すぽさんは、成長・ビジネスモデル・割安を銘柄選びのポイントに挙げています。それぞれの重要性について教えてください。

成長・ビジネスモデル・割安の3つは、銘柄選びの際に重視する順番です。

まずは成長力を見るために、各銘柄を成長力によってS、A、B、Cの4つのランクに分けてみます。
Sランクは成長率20%くらい期待できる銘柄で、PER40くらい。Aランクは増収増益が期待できるPER20くらいの銘柄、Bランクは黒字だけど成長は横ばいのPER10くらい、PBR1倍くらいの銘柄、Cランクは赤字が想定されているPBR0.5倍くらいの銘柄です。

このうち、Aランク以下は基本的には見ません。5年で株価が2倍以上になるような成長株は、ほとんどの場合、Sランクの中から出てくるからです。

――Sランクに分類できる銘柄の特徴はありますか。

その会社が扱っている商品にニーズがあり、商品の市場が成熟していないことが大事だと思います。ニーズが膨らめば業績も向上します。そのため、多少高値で買ったとしても、業績が吸収し、さらなる値上がりが見込めます。

一方、商品やサービスの市場が成熟するとニーズが落ち着き、低下します。つまり、それ以上の成長が見込めないということです。
この場合、将来的には市場が衰退していきますし、会社が5%くらい成長したとしても、地合いが悪ければ株価は30%くらい下がる時があります。このタイプの銘柄はAランクやBランクに多く、黒字で増収増益が狙えたとしても、大きく勝つのは難しいのです。

また、赤字想定のCランクは、もともと株価が安いため、何か材料が出ることによって大きく儲かることがあります。そこで5倍、10倍を狙うのはそれでワクワクしますが、赤字ですからリスクが大きくなります。材料などがない限り株価はそのままですし、最後は誰かを出し抜いてちょっとでも高く売り抜ける競争になりかねません。それなら、成長していく銘柄に乗って、乗った人全員が利益をとれるストーリーの方がいいと思います。

――そのためにも、商品やサービスが成長しているのか成熟しているのか判断する目が大事なのですね。

はい。商品などが市場に普及していく様子をマーケティングではプロダクトライフサイクルと言いますよね。そのサイクルのどの位置にいるか意識することが大事です。ただ、これから普及していく成長期だったとしても、必ず儲かるとは限りません。そこで重要なのが、2つ目に挙げたビジネスモデルを見ることなのです。

競争を耐え抜けるビジネスモデルか

――ビジネスモデルはどのように評価するのでしょうか。

ビジネスモデルの評価では、営業利益率の高さや、他社との競争環境に耐えられるかどうかといった点を見ています。
とくに重要だと思うのは競争環境についてです。前述した成長性が「攻め」だとしたら、ビジネスモデルは「守り」と考えると分かりやすいと思います。
液晶テレビが良い例でしょう。液晶テレビはニーズが大きく、多くの人がブラウン管から液晶に買い換えました。市場としては成長期で、ニーズも大きかったといえます。しかし、液晶事業に参入していた家電メーカーなどを見ると、巨額の投資をした韓国系メーカーが多少儲かったくらいで、他はどこも儲からずに撤退しています。つまり、価格競争になることを見据えて、その競争を耐え抜くビジネスモデルが作れていなかったということなのです。

――守りに優れたビジネスモデルといえるのはどんなモデルですか。

例えば、サブスクリプションで売り上げを確保するモデルは守りやすいと思います。サブスクを検討する人は、最初に契約するときは複数の商品を比較します。しかし、一度これと決めてしまうと、2回目以降はいくらだったか気にならなくなり、継続的に払っていることすら意識しなくなっていきます。そういう人間の特性のようなところを突いているモデルは守りが強いですよね。

プラットフォームも守りやすいのではないでしょうか。例えば、結婚関連の市場ではゼクシィというプラットフォームがあります。消費者は、結婚といえばゼクシィと認知していますので、情報収集のためにゼクシィを使います。業者側もゼクシィがよく見られていることを知っていますのでゼクシィに情報を出します。すると、さらにプラットフォーマーとしてのゼクシィの地位が固くなります。
そのような視点で見ていくことで、成長市場にいる企業を比較しやすくなると思います。

Sクラスの銘柄をAランク価格で買う

――すぽさんのポートフォリオで、ビジネスモデルを評価して買っている銘柄は何ですか。

どの銘柄も買う前にはビジネスモデルを見ますが、任天堂はとくにビジネスモデルを重視した銘柄といえるかもしれません。というのも、ゲーム機業界は基本的にはワンプラットフォームで、1つの機種しかプラットフォーマーになれない市場だと思っているからです。
過去を振り返ってみると、ファミコンやスーパーファミコンの時代があり、その後、プレイステーションの時代に変わりました。いずれの時代もプラットフォームとしてのゲーム機は1つで、他社が入り込める余地がほとんどありませんでした。

Wiiが出てからは少し流れが変わり、子供や女性がWii、ゲーマーがプレステという住み分けとなりましたが、プラットフォームが2つ存在している状態は長く続かないと思います。仮に共存の状態が壊れてどちらかが残るとすれば、プレステよりもSwitchの方が勝ち残りやすく、再び1つに集約される、つまり、Switch一択でゲーム機のプラットフォーム競争が決着していくのではないかと思っているのです。

――3つ目のポイントは割安ですね。

はい。割安は、Sクラスの銘柄をAクラスの価格で安く買うということです。具体的には、成長率20%、PER40くらいあるSクラスが、PER20くらいまで下がった時を狙います。

17年から19年くらいまでは全体的に株価が高かったため、Aクラス価格で買えるSクラスがあまりありませんでした。いまはコロナショックの影響で買える銘柄が増えましたが、リバウンドが早く、また買える銘柄が減っているように感じます。

――だからこそ、企業分析がより重要になるわけですね。

そう思います。業績は伸びているか、成長市場か、独自性があり、守りが効いているビジネスモデルになっているかといった点を見ていけば、5年で2倍くらいになる銘柄は見つかるだろうと思います。コロナショック後のいまは、早々にリバウンドした銘柄もありますが、戻りが遅い銘柄や業種もあります。そこに目を向けて、Aクラス価格に下がっているSクラス銘柄を探してみるのも良い方法だと思います。

次回はアフターコロナで狙いたい業種に迫ります

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