「パーセベランス」は医療のシンボルとともに火星へ。打ち上げは7月20日の予定

パーセベランスが収納されたバックシェルに装着される耐熱シールド。2020年5月28日撮影(Credit: NASA/JPL-Caltech/KSC)

来年2021年2月に火星のジェゼロ・クレーターへ着陸する計画の火星探査車「パーセベランス」(Perseverance、「忍耐」の意)の打ち上げまで、いよいよ1か月を切りました。当初は日本時間7月17日夜とされていた打ち上げ予定日は、日本時間7月20日22時15分に変更されています。

■医療従事者への感謝の気持ちを込めたプレートを装着

パーセベランスに装着されたプレート(Credit: NASA/JPL-Caltech)

6月17日、NASAのジェット推進研究所(JPL)は、ある1枚のプレートがパーセベランスに取り付けられたことを明らかにしました。プレートは横8cm×縦13cmのアルミニウム製で、医療のシンボルとして知られるアスクレピオスの杖(ヘビが巻き付いた杖の意匠)と地球を組み合わせたイラストが描かれており、パーセベランスの車体側面、左後方の位置に取り付けられています。

このプレートは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行下における世界中の医療従事者の忍耐に敬意を示すものとして取り付けられました。パーセベランスの副プロジェクトマネージャーを務めるMatt Wallace氏は「私たちは、他者のために自らを危険にさらしている人々への感謝の気持ちを表したかった」と語ります。

火星からのサンプルリターンを目指すNASAと欧州宇宙機関(ESA)による一連のミッションにおいて最初のステップであるサンプルの採取を担うパーセベランスでは、サンプルを保管容器に封入するシステムの開発に大きな努力が払われてきました。そこにさらなる難題として降りかかったのが、新型コロナウイルス感染症の流行でした。

地球と火星の位置関係上、今夏を逃してしまうと、次にパーセベランスを打ち上げられるタイミングは2022年9月まで待たなければなりません。家族、友人、同僚の安全を守るための感染予防策を講じつつスケジュールに間に合わせるべく準備を進めていくなかで、パーセベランスを運用するマーズ2020ミッションのチームは、医療従事者の献身とハードワークを強く意識したといいます。

アスクレピオスの杖に支えられるように描かれた地球のフロリダ半島からは、地球を離れて火星に向かう一本の軌道、その先端にある点としてパーセベランスが示されています。Wallace氏は「将来、火星を訪れてパーセベランスに出会った人が、2020年の地球における献身的な人々のことに思いを馳せてくれることを私たちは望んでいます」とコメントしています。

プレートはパーセベランスの車体左側面(画像中央付近)に取り付けられた(Credit: NASA/JPL-Caltech)

関連:パーセベランスが集めたサンプルを回収する探査車、ESAが開発中

Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA/JPL
文/松村武宏

© 株式会社sorae