<いまを生きる 長崎コロナ禍> 観光業界、反転攻勢への手だて 豊饒英之氏 インタビュー

 新型コロナウイルス流行で打撃を被った観光業界。長崎市の基幹産業を先導する長崎国際観光コンベンション協会DMO(観光まちづくり法人)推進局長の豊饒英之氏(46)に反転攻勢への手だてを聞いた。

 -都道府県境をまたぐ移動が19日に全面解禁され、自治体の誘客支援キャンペーンも逐次始まった。
 県や市の宿泊助成は大きな追い風だ。政府による国内旅行補助「Go To キャンペーン」も8月に始まる。全国の観光地の中から選んでもらえるよう、魅力の向上や準備を進めている。まだ世間体を気にする人も多いようで、旅行を楽しむマインドがどれほど回復するかは未知数。少なくとも感染を防ぐ「新しい生活様式」にしっかり対応しなければ、旅行者に安心して来てもらえない。
 市内で開催予定だった、ある全国規模の学会がウェブ会議に変更された。そこで、来崎できない参加者に対しウェブ会議の途中で長崎の観光や土産を紹介し、記念品も送ることにした。こうした情報発信や販売促進にも力を入れたい。

「長崎経済を回すには交流の産業化が必要」と語る豊饒氏=長崎市出島町、長崎出島ワーフ

 -MICE(コンベンション)施設「出島メッセ長崎」は来年11月開業する。
 今のところ大会や学会の延期・中止は聞いていない。参加者による消費を拡大するため、飲食や土産の店舗情報をデータベース化、スマートフォンなどで簡単に検索できるシステムを構築する。これまではイベントごとに店を募り、チラシを作成し配っていた。コロナ禍で苦しむ店にはビジネスチャンスとなるだろう。
 開業2年前イベントでは参加者を長崎駅から、まちなかに誘導し回遊を促す実証をした。開業1年前は「新しい生活様式」に応じた形に深化させたい。

 -やはり安全安心の確保が誘客の鍵を握りそうだ。
 感染症研究で評価の高い長崎大の存在は心強い。東京ディズニーランドをはじめ都市型観光は「密」の回避が難しいが、長崎は郊外にも魅力がたくさんある。茂木地区では昨年、インバウンド(訪日外国人客)向けに、ふぐ雑炊や田舎弁当、朝の漁港散策など食と体験を組み合わせたコンテンツを企画。高島や外海、野母崎の各地区でも地域と連携し開発を目指している。

 -実際にインバウンドを受け入るのはまだ先では。
 既に他自治体もプロモーションの準備に入っている。われわれの公式フェイスブックページ「ビジットナガサキ」は英語で海外に発信しており、4月7日には2万6千件の「いいね!」を得た。潜在的ニーズはある。人口減少著しい長崎が経済を回していくには、コロナとしなやかに付き合いながら「交流の産業化」を推し進める必要がある。

 【略歴】ぶにゅう・ひでゆき 1974年、宮崎県串間市出身。東京大経済学部卒。98年JR九州入社。博多駅長崎車掌区勤務時、長崎市に1年間住んだ。鉄道事業本部営業部ではインターネット予約システムを構築。昨年4月から出向し現職。


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