IDC、新型コロナウイルス感染症が流行したにも関わらず2020年も企業のDXへの支出は増加すると予測

IDC Japan株式会社は、世界のDXへの支出額に関する予測を発表した。これによると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によってさまざまな問題が生じたにも関わらず、企業におけるDXに向けたビジネス推進、製品、組織運営上の支出は継続される見通しとしている。2020年、DX向けテクノロジー/サービスに対する全世界の支出額は前年比で10.4%増加し、1兆3,000億ドル超になると予測している。2019年の前年比成長率17.9%に比べると顕著に遅いペースですが、今年はテクノロジー全体への支出が激減する中で、数少ない明るい材料となる。米国IDC Customer Insights & Analysis Group シニアリサーチマネージャーのクレイグ・シンプソン氏は「COVID-19によって世界経済の様相は一変し、企業のIT投資に直接的なマイナスの影響が及んでいます」と述べている。また「DXテクノロジーへの投資も無傷というわけにはいきませんでした。それでも、現在進行中または計画中の大型DXプロジェクトは、その多くが広範で戦略的な事業上の取り組みを進める上での手段となるため、現段階での影響は小さめです。COVID-19発生前のIDC予測と比べて、5年間のDX支出成長率の下げ幅は、2ポイントに満たない程度です」と述べた。前年比でDX支出成長率が最も落ち込むと予測されるのは、COVID-19による経済の悪化の影響が大きい産業分野である。ホテル、テーマパーク、カジノ、映画館などを含む個人向けサービスにおけるDX支出額は、2019年の18.4%の成長から、今年は5.3%の増加にとどまる見通しだ。同様に、DX支出額が最も大きい産業分野である組立製造は、2019年の14.5%の成長から、今年は6.6%に低下すると予測している。2020年、DX支出額の伸びが最も大きいと期待される産業分野は建設/土木(16.3%)および医療(15.7%)だが、どちらも昨年と比べて成長のペースは遅くなる見通しだとIDCではみている。米国IDC Customer Insights & Analysis Group プログラムバイスプレジデントのアイリーン・スミス氏は「2020年から2023年までの全世界のDXテクノロジーの投資額に関するIDC予測は、COVID-19の発生により、COVID-19以前の予測と比べて約5,000億ドル下方修正されました」と述べている。また「これほど大きく減少しても、個々のビジネス上の問題を解決する具体的なDXユースケース(特定の行動計画の目標に向けて個別に予算化されるプロジェクト)を詳しく見ていくと、ほとんどの業種に渡って成長機会は随所にあります。いくつか例を挙げると、保険における「RPA(Robotic Process Automation)ベースの請求処理」、教育における「デジタル視覚化」、通信における「オムニチャネルコマースプラットフォーム」、プロセス製造における医薬品開発上の「臨床試験のオペレーショナルエクセレンス」などです」と述べた。今年、支出額が特に大きいと見込まれるDXユースケースとしては、「自律型オペレーション」(510億ドル)、「ロボティクス製造」(470億ドル)、「製造上の障害の根本原因の把握」(350億ドル)が挙げられる。いずれも製造セクターのユースケースである。前年比で支出の伸びが最も大きいと見込まれるDXユースケースは、教育における「仮想化ラボ」と「デジタル視覚化」、保険における「RPAベースの請求処理」、そして専門サービスにおける「設計管理の拡張」である。「Worldwide Digital Transformation Spending Guide」で特定されている278のユースケースのうち、今年、支出の減少が予測されるものは9つのみとした。地域別に見ると、米国は引き続きDX支出額が最大の市場であり、2020年全世界の総支出額の約3分の1を米国が支出する見通しだ。支出額が2番目に大きい地域は西欧であり、中国が僅差で続いている。これら2つの地域は、前年比でDX支出額の伸びが最も大きい地域でもあり、中国は13.6%、西欧は12.8%の増加が見込まれるとした。

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