昆虫食ブーム到来? コオロギが重宝される理由

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「たとえばバッタはエビの味ですし、セミはナッツの香りがします」――。そう教えてくれたのは昆虫料理研究家の内山昭一さん。

無印良品が商品化した「コオロギせんべい」やコオロギ100匹を使用した「コオロギラーメン」、渋谷パルコにオープンしたジビエ・昆虫料理店「米とサーカス」が話題になるなど、最近なにかと注目される昆虫食。

昆虫そのままのかたちで料理として提供されることも多く、その見た目から怖いもの見たさで手に取る人も少なくありませんが、注目される理由はそれだけではありませんでした。


昆虫食が注目される理由

「地球規模の人口増加や温暖化による食料不足が課題となるなか、いま昆虫食がその解決の切り札として注目されています」NPO法人 昆虫食普及ネットワークの理事長も務める内山さんはそう教えてくれました。

2013年に発表された国連食料農業機関(FAO)の調査報告書によると、食材や水産養殖・養鶏のための飼料に昆虫を活用することは、環境、健康、社会、経済面で見たときに多くの利点があるとしています。

生育環境やエサによって違いはあるものの、昆虫には良質なたんぱく質と脂肪、カルシウム、繊維、鉄、マグネシウムなどの栄養素が多く含まれ、栄養価が高いといいます。また昆虫の養殖は畜産ほどに土地を必要とせず、採集・販売は比較的誰でも簡単にできるため新しい生計策のひとつになり得るとして期待されているのです。

高栄養でポテンシャルのある食材として昆虫が見直されたことで、「近年、日本の昆虫食人口が増えています」と内山さん。

すでにアジア、アフリカ、南米をはじめ、最近では北欧などで受け入れられている昆虫食。日本は古くからイナゴやハチノコ(蜂の幼虫)を食べるという文化が根付いているため、昆虫食を受け入れる素地があるといいます。

同調査報告書によると、世界で食べられている昆虫類は1900種類以上。昆虫食の研究が進むにつれて、その数は増えてきているそうです。

昆虫はどんな味?

加熱処理したのちに乾燥、塩で味付けされたフタホシコオロギのスナック 15g 1180円(税込)

コオロギ、タガメ、ゲンゴロウ、カブトムシ、タランチュラ、オケラ、サソリ(キョクトウサソリ)。台東区にある昆虫食ショップ「TAKEO」では、誰でも知っている昆虫から名前は知っていても実際に目にしたことのないようなめずらしい昆虫まで、スナックになって販売されています。

実際に商品を手に取るのはどんな人なのでしょうか。「年齢層は本当にバラバラですが、(日本で古くから食べられている)イナゴなどを食べたことがない若い方のほうが多い気がします。女性のお客さまも多いですね」と話すのは店長の三浦みち子さん。最近は昆虫食がメディアに取り上げられる機会が増え、それを見て興味を持った人が訪れることも多いといいます。

ワームにたどり着くまでのドキドキ感がたまらない。昆虫キャンディ スーパーワーム レモン風味 680円(税込)

ひとくちに昆虫食といっても、味はさまざま。たとえば水生昆虫のタガメは「香りがとてもフルーティ」と三浦店長。タガメの香りを存分に楽しめる「タガメサイダー 200ml」(税込480円)は昆虫食初心者におすすめだといいます。

特許取得の独自の製法で抽出したタガメエキスを0.3%配合。濁りが特徴のタガメサイダー

またコオロギは一般的にエビの味がすると言われていますが、「コオロギの種類、調理法によって味わいは変わってきます」。同社が実店舗限定で販売している「コオロギアイスもなかーしょうゆ味ー」(税込480円)にかけられた、フタホシコオロギを使用したみたらしソースはゴマのような風味がするといいます。

中でもコオロギが重宝される理由

FAOの同調査報告書によると、昆虫の中で一番食用されているのはコガネムシやゾウムシといった甲虫類(31%)。次に、ケムシ・イモムシ類(18%)、ハチ(14%)、バッタ類(13%)と続きます。

バッタ類が占める割合はそんなに大きくはありませんが、バッタ類の中でも特にコオロギは、おせんべい、チョコレート、ラーメン、ビールと、最近さまざまな形態の昆虫食に用いられています。

コオロギが多用される理由について、三浦店長は「他の食用に適している昆虫より飼育が容易だからだと思います」。コオロギは一般的に、飼育サイクルが短いため全体的にコストを低く抑えられるといいます。

また昆虫料理研究家の内山さんも、「狭いところでたくさん飼うことができ、年中繁殖し、なんでも食べ、成長が早いから生産効率が高いのです」と、昆虫の中でも特にコオロギは養殖に向いていると話します。


パウダー状もしくはペースト状に加工されたものも多く販売されている昆虫食。無印良品の「コオロギせんべい」のように練りこんでしまえば、昆虫食のハードルは格段に下がるのではないでしょうか。魚類、肉類にならび新しい食材の選択肢として「虫類」が受け入れられる日はそう遠くないのかもしれません。

取材協力

内山昭一(うちやま しょういち)

1950年長野市生まれ。昆虫料理研究家、NPO法人昆虫食普及ネットワーク理事長、NPO法人食用昆虫科学研究会理事。昆虫の味や食感、栄養をはじめ、あらゆる角度から食材としての可能性を追究。著書に『昆虫は美味い!』(新潮新書)『ホントに食べる? 世界をすくう 虫のすべて』(文研出版)ほか。東京都日野市在住。