2020年度の実質国内総生産(GDP)は戦後最大のマイナス成長となる見通しだ。「コロナショック」がもたらす日本経済へのインパクト、その実相に迫る。=敬称略
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横浜でダイニングバーを始めて10年余り。飲食店経営者の田島洋一(41)はかつて経験したことのない不景気に直面していた。
「2、3月の売り上げは7~8割減。4、5月は9割減。持ち帰りや宅配でなんとかしのぎ、6月に入り客足がわずかに戻ってきた感じがしなくもないが…」
それでも1日の客数が5人という日もある。「『密』を避けるも何も、ほとんど人が来ない」。持続化給付金や10万円の特別定額給付金、そのほか「頂けるものは全て申請した」が、毎月かかる家賃や固定費の支払いであっという間に消えていった。
融資を受けることも考えたが悩んだ末に見送った。「結局は借金になる。いずれ返さなければいけない。その確たる当てがあるわけではない」。貯金を切り崩しながら持ちこたえているのが現状だ。
「開業間もない若い店の経営は本当に厳しいはず」と田島は慮(おもんぱか)る。開業資金の返済が重荷になっていることに加え、貯蓄もわずかだからだ。
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新型コロナウイルスの感染拡大によって人の動きが制限され、飲食、宿泊、観光といった業種の売り上げが直撃を受けている。緊急事態宣言が解除されたものの、その後の回復もおぼつかない。
世界的な経済の停滞は、国内外の製造業や物流など全産業に波及し、影響は雇用や所得に及び、消費全体を冷え込ませる悪循環が始まっている。
実体経済の急落は、緊急事態宣言が解除され、若干の歯止めがかかった段階だが「大幅な下落からわずかに落ち幅が緩和されただけ。下げ止まるという状況ではない。今後の見通しの不確実性は極めて高い」(日銀・福田英司横浜支店長)。
飲食店経営の田島は試行錯誤を続けている。「新しい生活様式」が求められているからだ。
「ビュッフェコーナーの食器置き場に殺菌灯を付けたり、トングを何十本も買ったりと、悩んでいる。どうしたら来店客に『安心』してもらえるか。飲食店にとって欠かせない要素になってくる」
だが、客足が戻ってきても、席の間隔を空けなければならない。それは売り上げ減に直結する。「新しい生活様式」は経済の足をひたすら引っ張り続けることになる。田島は言う。
「今年の10月ごろには元に戻ると考えて営業を再開した。いつまでもコロナ前に戻らないとしたら、経営は続けられない」