キモかわいい!オオサンショウウオこんにゃく人気 広島の高校生が開発、SNS発で特産品に

広島県立湯来南高校の生徒らが開発した「オオサンショウウオこんにゃく」

 会員制交流サイト(SNS)に投稿された「キモいのにすげー売れるって」という書き込みと、国の特別天然記念物オオサンショウウオをかたどった、まだら模様までリアルに再現されたこんにゃくの写真―。広島市の高校生が開発した「オオサンショウウオこんにゃく」は、商品を買った人のSNSへの投稿から人気に火が付き、今や地域を代表する特産品だ。高校生のアイデアが地域の活性化につながっている。(共同通信=高野和俊)

 商品を開発したのは広島市佐伯区の湯来町(ゆきちょう)地区にある県立湯来南高校の家庭クラブの生徒ら。高齢化と過疎化が進む地元を活性化しようと、同高が取り組む「湯来温泉同好会プロジェクト」の一環で、2015年ごろから新たな特産品の開発に取り組んだ。

 生徒らは地元特産のこんにゃくと近くの川にすむオオサンショウウオに着目。最初の試作ではオオサンショウウオの型の細部にまでこんにゃくを入れるのが難しく、歯ごたえにむらが出る課題もあったが、商品化に向け、地元のこんにゃく業者「藤利(ふじとし)食品」に協力を仰ぎながら、打ち合わせを重ねた。

パックにはだしも入っている

 試作の段階でイカスミ入りのこんにゃくでもオオサンショウウオこんにゃくを作ったが、「黒すぎて気持ち悪い」としてボツに。シシャモの卵が入った「子持ちこんにゃく」で作ってみると見た目もかわいく、味も好評だった。浮遊感を出したいという生徒の案も取り入れ、パックにだしを同封し、商品化にこぎ着けた。

 試作を経て商品は17年6月の同高の文化祭や地元のイベントで販売。文化祭では「リアル」「どこから食べて良いか分からない」などの反響があり、用意した100個が完売した。その後、地元の特産品を扱う湯来特産品市場館でも販売するようになったが、週に20個程度の売り上げにとどまっていた。

 開発に協力し、製造を担う藤利食品代表の伊藤剛(いとう・つよし)さん(50)も当初は「売れるかどうかは別にして、地元の高校生に協力できるなら」と考えていた。こんにゃくの製造はオートメーション化する業者が多い中、オオサンショウウオこんにゃくはその形から手作業の工程も。「手作業で作ってきた藤利食品だからこそ引き受けられた。ほそぼそとでも作り続けた」と伊藤さんは笑って振り返る。

藤利食品代表の伊藤剛さん

 それが昨年夏にSNSで拡散されると「キモかわこんにゃく」として話題になった。多くのメディアにも取り上げられ、2千個以上売れた月もあった。藤利食品ではこんにゃくの型をおよそ20個から100個に増やし対応した。それでも製造が追い付かず、インターネットでの販売も始めたが、全国から注文があり、購入まで数カ月待ちの状態が続く。

 湯来特産品市場館には県外からも多くの客が訪れ、オオサンショウウオこんにゃくが一番の売れ筋だ。隣接する湯来交流体験センターではオオサンショウウオこんにゃく作り体験も行われ家族連れなどでにぎわう。

 新型コロナウイルスウイルスの感染拡大に伴い、4月~5月は湯来特産品市場館も休業せざるを得ず、湯来南高校でも学校行事が中止になり、オオサンショウウオこんにゃくの販売ができなかった。それでも伊藤さんは今後の販路の拡大に前向きで、湯来南高校には、地域の人から「高校生のアイデアが欲しい」という声が届くという。

県立湯来南高校家庭クラブ顧問の好満裕子教諭(左端)と生徒ら

 湯来南高家庭クラブ顧問の好満裕子(よしみつ・ひろこ)教諭(45)は「湯来町地区の良さをたくさんの人に知ってもらいたい。湯来町地区が元気になるような活動を高校生から発信していきたい」と話した。

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