【汐留鉄道倶楽部】今年3月以降、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、国内はもとより世界中で外出がままならない緊急事態となった。「不要不急の旅行などもってのほか」ということで、現地レポートを大切にしてきた汐留鉄道倶楽部にとっても試練の数カ月だったと思う。だが、こんな時こそ想像をたくましくしたい。
インターネットで誰でも利用できるさまざまな地図サイトは、家籠りの時間つぶしにはぴったり。実用面だけでなく、マニアならではの発見もあっておもしろい。なかでもグーグルマップは、地図だけでなく空からの写真、地上からの写真(ストリートビュー)など多彩な機能が備わっており、手元の操作だけで、たちまち見知らぬ遠い世界へ連れて行ってくれる優れものだ。
米カリフォルニア州・ロサンゼルスの北約100キロ、ユニオン・パシフィック鉄道が運営する線路がテハチャピ峠を越えるためにきれいな円を描くループ線は、世界の鉄道ファン憧れの地である。何がすごいって、この周辺は山地であってもそれほど険しくはなく樹林もまばら。そのため線路がくねくねと台地をはって峠を越えて行く様子が、グーグルマップの写真で見ると鉄道模型のジオラマのように一望できる。
さらに驚くのは、長大な貨物列車がちょうどループにさしかかっているではないか。編成をじっくり数えてみると、動力車が前後に3両と2両、中間にも3両ある。そして貨車は99両。合計107両の大編成だ。1両約20メートルで換算すれば2キロ以上の長さとなる(実際地図上で計測できる)。ループの直径は約400メートルなので、列車はぐるっと1周して上下に交差する珍しい光景がここの名物だそうだ。
列車がちょうどループに差し掛かっているこの画像は、偶然撮影されたのだろうか。真相は分からないが、粋な計らいかなと思っている。
米国から欧州に飛び、ドイツでぜひ一度訪ねてみたい鉄道名所を探してみる。「ヴッパータール空中鉄道」と呼ばれる世界最古の実用モノレールだ。車両が線路にぶら下がる懸垂構造のため、真上からの写真では車両は見えないが、こういう時は地上画像のストリートビューが役に立つ。根気よく探したら、街中を走る車両を見つけることができた。
グーグルマップの写真は3Dに切り替えることで、普段は見ることが不可能な絶好のアングルで鉄道施設に近づくことができる。
東海道新幹線の白いN700系がずらっと並ぶ東京・大井車両基地。その南端で軌道検測車「ドクターイエロー」を見つけた。一方JR東日本の東京新幹線車両センターに近づけば、赤のE5系、緑のE6系、青のE7系と色彩豊かな車両が並ぶ様子が確認でき、JR東海とは対照的な景色だ。
便利なのはグーグルマップだけではない。国土地理院のサイトでは1940年代ごろから現在までの航空写真を検索して見ることができるので、廃止された鉄道が健在だった当時の姿を確かめられる。カシミール3Dという山岳展望ソフトを使えば、鉄道から見える山々の名前が分かり、路線の断面図を作成することもできる。
コロナが収まり、また自由に世界中を行き来できる時が遠からず来ると信じて、今はとにかくググってググって、ドラえもんの「どこでもドア」のごとく夢を膨らませたい。
☆共同通信・篠原啓一
※汐留鉄道倶楽部は、鉄道好きの共同通信社の記者、カメラマンが書いたコラム、エッセーです。