遠藤周作の未発表小説「影に対して」見つかる 死去後初めて 

遠藤周作氏(写真提供:長崎市遠藤周作文学館)

 「沈黙」など長崎県ゆかりの作品を多く残した作家遠藤周作(1923~96年)による未発表小説の自筆草稿の一部と清書原稿の全文が、26日までに長崎市東出津町の市遠藤周作文学館で見つかった。題は「影に対して」。母の生きざまに強い影響を受ける男が主人公の自伝的中編小説。同館によると、遠藤の死去後に未発表の小説が見つかったのは初めて。
 同市の田上富久市長が同日の定例記者会見で明らかにした。「影に対して」の自筆草稿は400字詰め原稿用紙の裏に2枚、全文は遠藤の秘書が清書したもので同104枚。63年以降の執筆と推測される。
 両親が離婚し、平凡な生活を営む父親の元で育った主人公勝呂(すぐろ)が、音楽家として大成を目指した母親の人生をたどるストーリー。遠藤の人生観を知る上でも貴重な作品と言えそうだ。

「影に対して」の秘書による清書原稿(写真提供:長崎市遠藤周作文学館)

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