芸達者、阿部サダヲと松たか子の早口バトルの陰に、奥の深い背中突き落とし事件の闇があるサスペンス <スペシャルドラマ スイッチ>(テレビ朝日系)

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脚本家(坂元裕二)も有名人、演出家も業界では有名人、個性的な主演者の阿部サダヲと松たか子が奏でる早口言葉みたいなやりとりのサスペンスドラマとあれば、どんなに面白いのかと期待してみたが、いささかあて外れだった。キスシーンが凄かった(笑)けれど。駒月直(阿部サダヲ)は横浜地検みなとみらい支部の検事、蔦谷円(松たか子)は横浜ゴールド法律事務所の弁護士で元恋人。

階段から「背中ドン」して人が突き落とされる事件が頻発し、2人がその事件の担当者として向き合うことになる。2人は16歳の時から付き合っていたが今は別の恋人、佐藤亜希―料理研究家と、代理店勤務の鈴木貴司(眞島秀和)という相手がいる。4人で食事した夜にそれぞれ別にプロポーズされる。最初は4人で盛り上がる会話劇だったので、コメディか?とずっこけて見ていた。

ただの薄っぺらい突き落とし傷害事件が、意外に奥深く、最後は円があわや人殺しの直前まで行く。如何にも坂元脚本らしい闇がある。松が老けて法令線が目立つ女になり、口では「裁判に勝ちゃあいい」と言っていたくせに、人間としての憤怒は抱えている中年の草臥れた弁護士を怪演。ただし、4人の男女の恋愛模様部分が多すぎて、サスペンスのワクワクが途切れがち。芸達者の早口バトルを描きたいのか、組織の不条理を描きたいのか、欲張り過ぎだ。ずいぶん昔の新聞記事を簡単に見つけられるのもリアルでない。(放送2020年6月21日21時~)

(黄蘭)