第2回 ◆ パンデミックを機に普及したビデオ診療

ビデオ診療を上手に利用 遠方からの診察にも有用

Q. パンデミックを機に導入されたビデオ診療は順調ですか?

A.

はい。ビデオ診療を取り入れてから、ハーツデールにあるクリニックにいながら、マンハッタンやロングアイランドなど、遠方の患者の診療もできるようになりました。当クリニックでのビデオ診療は、マウントサイナイ病院の「マイチャート」システムのアカウントが必要で、それ専用のアプリを使うので、最初のセットアップに戸惑う患者も多いですが、一度セットアップすれば二度目からはスムーズです。

ビデオ診療を受けるには、まずは普通にクリニックに来てもらう時と同じように、受付に電話をして予約を入れていただきます。その時に、アプリのダウンロードやセットアップについては、受付スタッフが丁寧に対応するので、分からないことがあればクリニックにお電話ください。

高齢者の中には、コンピューターやスマートフォンが使えない人もいるので、その場合は電話での診療も可能です。ただ、電話では顔が見えない分、診断、診療も難しくなります。

Q. ビデオ診療の良い点、難しい点は?

A.

コロナウイルスの症状(熱や咳)がある場合、クリニックに来てもらうことはできないので、そうした患者の診療に適していることは言うまでもありません。現在、状況は多少落ち着きましたし、クリニックでは感染予防に万全を期していますが、それでも医療施設に来たくないという患者もまだまだ多く、今やビデオ診療は必要不可欠なものになりました。

電話で声だけを聞くよりも、ビデオで患者の顔が見えるということは、とても大事な要素です。「百聞は一見にしかず」と言いますが、電話だとどんなに詳細に説明しても十分に通じない症状も、ビデオなら一目瞭然です。患者の顔色を見るだけで、どの程度具合が悪いのか分かることも多いです。

また、個々の内科・家庭医、小児科医にもよりますが、私は簡単なメンタルヘルスのカウンセリングも受け付けています。必要に応じて専門医を紹介しますが、ビデオ診療はそうした心理カウンセリング分野でも大変有用です。

同時に、ビデオ診療にも限界はあります。耳の痛みなどはビデオでは診断しにくいし、へんとう腺やインフルエンザの検査や各種予防接種も、ビデオではできません。年に一度の健康診断も、クリニックに来てもらう必要があります。

さらに、ビデオ診療では、初診の患者に睡眠薬や精神安定剤、ADHDの治療薬などの規制薬物を処方することはできません。

ビデオ診療時代の「一家に一台、医療器具」は、体温計、血圧計、体重計

Q. 今後も州を超えてのビデオ診療は可能ですか?

A.

通常、ビデオ診療の場合は、クリニックがある州内に患者が居住していることが条件です。しかし、パンデミック中は例外的に、近隣州政府からニューヨーク州内のクリニックに対して、州を超えての診療許可が下りています。コネティカット州からは7月末まで、ニュージャージー州からは10月末まで下りており、現在当クリニックでは期間延長を両州に問い合わせています。

7月いっぱいはコネティカット州在住の人も、当クリニックでのビデオ診療は可能です。8月以降については、個別にお問い合わせください。

Q. ビデオ診療時代の「一家に一台」的な医療器具は?

A.

体温計は皆さんお持ちと思いますが、その他に血圧計と体重計があればとても役立ちます。

加納麻紀先生 Maki Kano, MD

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内科・小児科専門医師(Board Certified)。 マウントサイナイ医科大学卒業後、同大学とニューヨーク大学医療センター共同の内科・小児科専門医師養成・研修プログラム修了。 米国日本人医師会(JMSA)副会長、日本人家族と子供に医療関連教育や健康支援プログラムを提供する非営利団体(NPO)「ニューヨークすくすく会」代表。

東京海上記念診療所 Mount Sinai Beth Israel Japanese Medical Practice WestchesterOffice 141 S. Central Ave., #102 Hartsdale, NY 10530 TEL: 914-997-1200

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