ヘアドネーション「誰かの宝物になるならうれしい」 提供の女性に密着

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「髪もわが子のように育てた」とほほ笑む藤田さん=ヘアサロンプレーゴ

 新型コロナウイルスによる外出自粛要請で、髪のカットを我慢していた人も多いだろう。さてそろそろ、いつもより伸びた髪を夏に向けてバッサリ…。そんな予定のある人は、ちょっと待った。いっそのこと31センチ以上伸ばしてみて、必要としている誰かに贈ってみませんか。(喜田美咲)

 がんの治療やけがで髪を失った子どもたちに人毛のウィッグ(かつら)を寄付する「ヘアドネーション」。人毛で作ると、化学繊維のウィッグに比べてテカらず、見た目が自然で、毛も絡まりにくいと人気だ。

 「できるだけ長く贈れるように切ってください」

 6月中旬、兵庫県三田市けやき台1の美容院「ヘアサロンプレーゴ」に同市の主婦藤田律子さん(46)が来店した。3年半前、小学生の男の子が髪を長く伸ばして2度も寄付したという記事に胸を打たれて実践したという。

 「今まで量が多いのが嫌ですぐ切っていたけれど、わが子を育てる気持ちで大切に扱った」

 お風呂上がりはタオルでこすって傷めないようにドライヤーをかけ、トリートメントも欠かさない。黒髪はまっすぐに伸びて、腰に届くまでになった。コロナ禍で献血に協力したり、アマビエを作ったりと、前向きに生きる人たちの姿を見て、今こそ自分にできることをしようと、ついにカットすることを決めた。

 まずはNPO法人「ジャパン・ヘアドネーション&チャリティー」が発行するドナーシートに記入し、美容師とヘアスタイルを相談して寄付する長さを決める。

 藤田さんは髪の長さを測ると80センチ近くあり、このうち約55センチを贈ることにした。髪はゴムでいくつかの束にして切られていく。すっきりとしたショートボブになると、「誰かの宝物になるならうれしい。またしたいな」と笑顔を見せた。

 美容師が髪の束をまとめると、見た目は馬のしっぽのよう。それをしっかりと結び、カビが発生しないように乾燥した状態で袋詰めして、ドナーカードと共に同法人に郵送する。

 法人は受け取ると、専用の工場でトリートメントなどを施し、かつら大手「アデランス」の協力で専用のウィッグを作る。その後、頭髪に悩みを抱える18歳以下の子どもたちに無償で届けている。

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 NPO法人「ジャパン・ヘアドネーション&チャリティー」は2009年に設立した。人毛でウィッグを作る団体は全国に複数あるが、最初に手掛けたことで知られる。

 同法人によると、6月末時点で法人に申し込んで人毛ウィッグを待っている人は430人に上る。7月からは美容院ではなく、個人が店から髪を持ち帰って郵送で寄付してもらう仕組みに変更する。髪は激しく傷んでいない限り、カラーリングをしていても問題はないという。

 法人に届く髪は1日300~500件あり、年間で約10万件。ただ、渡辺貴一・法人代表(49)は「長い髪が足りていない」と話す。

 髪は31センチから受け付けているが、30センチ台で作れるのはショートヘアのウィッグのみで、30~50人分の髪があってようやく一つができる。しかし女子はロングを希望する子が多く、一つ作るには50センチ以上の髪で100人分が必要になる。50センチ以上の寄付となると、極めて少ないのが実情だ。

 「コロナ禍で生産工場もストップして大勢の人を待たせてしまっている」と渡辺さん。「寄付を考えている人は、行きつけの美容院に予約の段階で『ヘアドネーションをしたい』と相談してほしい」としている。