『台湾の会計制度 会計基準の国際化と国家戦略』 隣人に学ぶ“地域”際の思考

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 本書は、台湾の会計制度を研究してきた著者(現在、名桜大教授)の約20年間の研究の成果である。評者は会計研究については門外漢だが、台湾現代史を専門とする立場から、本書の意義と価値を「地域」の視点から評してみたい。
 本書は全12章からなる4部構成をとる。第1部は「台湾会計制度の基礎と会計基準の国際化」、第2部は「会計制度の選択が個別企業に与えたエフェクトの分析」、第3部は「会計制度の選択に対する関係主体の評価」、第4部は「中小企業向け会計基準の設定による会計制度の整備」である。
 本書の中心的な議論は、台湾におけるIFRS(アイファース、国際会計基準)の導入・適用と効果の検証である。EUに始まる同制度は、110以上の国・地域が採用する。日本では未導入であるこのIFRSを、台湾は2008年にタスクフォースを設置し導入を進めてきた。著者は、そうした既存の会計制度とのコンバージェンス(収れん)、アドプション(導入)とその影響について、インタビュー調査を取り入れつつ、詳細を具体的に明らかにしている。
 本書の中で、著者は「台湾の経験から学ぶ余地」に繰り返し言及する。そこには、国際社会から国家としての承認が得られないからこそ、自身をどこよりも“国際化”して透明性を高め、国際的信頼を勝ち得ることで生存空間の拡大を図る台湾の“国家戦略”が見て取れる。本書で展開される、隣人・台湾の会計制度に見いだすことのできる先進性の説明は、名桜大学国際学群の教員としてだけでなく、環太平洋地域文化研究所初代所長を拝命した著者によるものだからこそ、強い説得力を持つ。
 沖縄は東アジアにおける地理的優位性を持つ。それゆえに、「“国”際」以前に「“地域”際」の思考と行動が可能となる。新型コロナ対策でも、台湾は世界から高い評価を受けた。日本がアジアをけん引する時代は過ぎ去り、制度や枠組みにおいても、“地域”際に目を向け隣人から学ぶ、その視座の重要性を本書は教えてくれている。
(菅野敦志・名桜大学上級准教授)
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 なかおじ・ようこ 1969年生まれ、金武町出身。名桜大学国際学群教授、博士(商学)。名桜大専任講師、准教授を経て現職。環太平洋地域文化研究所所長。