継続支援B型事業所 ステップアップの流れつくる 収益性が課題

五島うどん製造に取り組む就労継続支援B型事業所「五島あすなろ作業所」の利用者。ワカメを練り込んだ生地を、機械で細く伸ばしていく=五島市

 障害者の就労で課題となってきたのが、賃金(工賃)の低さだ。特に福祉サービスの就労継続支援B型事業所では、月の工賃が数千円の施設も珍しくない。五島市内の施設関係者は「収益性の上がる事業を始める資金や人材が足りない。工賃を上げるため業務を詰め込むと体調を崩す利用者もおり、現状維持が精いっぱい」と明かす。本土と比べ、B型事業所などに業務の下請けを出す企業が少ないという離島ならではのハンディもあるという。
 そんな中、五島市籠淵町のNPO法人五島あすなろ会(土岐寛志理事長)が運営する2カ所のB型事業所は、工賃の平均額が6万5千円前後で県内トップレベルを保っている。
 同会の前身は、2001年に設立した小規模作業所で、市指定のごみ袋製造などを受注。06年にNPO法人化し、07年から同作業所をB型事業所として運営する。11年に、障害者の一般就労の場として法人関係者が経営していた五島うどん製造の株式会社を、NPO法人に統合した。
 比較的高い工賃を実現できる理由について、土岐理事長は「もともと株式会社として五島うどんの製造や販売をしていて、島外での販路拡大や品質向上を進めてきた経営の視点があった。NPOと統合後、福祉的な支援とうまく融合できたことが大きい」と語る。
 工賃向上だけでなく、障害者が働きながら社会と積極的に関われる仕組みも検討してきた。17年には新たなB型事業所を設立し、市内に五島うどん店を開店した。
 同法人の中で、ごみ袋製造などの仕事を通じて基本的な生活リズムを学び、製麺所で体力や技能を習得、うどん店で社会生活を体験する-というステップアップの流れをつくった。土岐理事長は「最終的な目標は一般就労。利用者の特性に応じた支援を続けていきたい」と話す。


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