覚悟も生活力もない夫にイライラ、収入の低下が夫婦間の諍いに

新型コロナウイルスは、私たちの生活を一変させました。あらゆる行動の自粛を余儀なくされ、経済的にも厳しさが増す一方です。在宅勤務で仕事はあっても、残業代が入らず、実質給与が目減りしている人も多いようです。さらに派遣の雇い止め、パートは無給で自宅待機なども。収入の低下は、夫婦間の諍いの元にもなります。


夫の借金が発覚

「貧すれば鈍するって本当ですよね。特にストレスに弱いうちの夫を見ていると、イライラしてきます」

ハツネさん(39歳)は苦渋に満ちた表情でそう話してくれました。結婚して10年、8歳と4歳の子をもち、パートで働きながら家庭を大事にしてきたのだといいます。ところが、このコロナ禍で、6歳年上の夫は在宅勤務となり、残業代がほとんど入ってこない状態です。

「夫は出張が多かったので、残業や出張手当が意外と入ったんです。逆にいうと基本給は高くない。そういうシステムの会社でした。今回、家で仕事をするためにネット環境を整えたりして、かなり出費がありましたけど、それは会社は補填してくれないとか。出ていく一方で実入りが少なくなり、ボーナスも期待できません」

ハツネさん自身も、4月から自宅待機を命じられました。6月に入っても、職場は以前のようには機能していないようです。

「夫の精神状態が不安なんですよね。4月の半ば過ぎくらいから夫はかなりストレスがたまっているようで。子どもに声を荒げたり、大きな音をたててドアの開閉をしたり。もともと穏やかな人なんですが、かなり変わった」

連休前に、ハツネさんは夫とじっくり話し合いました。夫はとにかく収入減を気にしていたそうです。結婚3年目に中古ながらマンションを購入したので、そのローンもあり、夫は過剰なほど収入を気にしていました。

「もちろん余裕なんてないけど、なんとかふたりでがんばっていこうよと言ったんですが、なぜか夫は心ここにあらずという状態。ひょっとしたら何か隠しているのかもと問いつめてみたら、なんと夫は借金をしていたんです」

小遣いでは足りず、少しずつキャッシングしていたようですが、それが300万円にふくれあがっていました。後輩を誘っては飲みに行って奢ったりもしていたそうです。

「後輩たちに慕われているんだと思っていたけど、実際には金の力だったのかもしれません。きちんと人間関係が築けていたのだろうかと心配になりましたが、それを言ったら激怒されて……」

このままだと借金返済が追いつかないと夫は苦しんでいたのです。今までは会社に頼んで残業代の一部を夫自身の別の口座に振り込んでもらっていたことも判明しました。

アルバイトを探して

ハツネさんは、こうなったら自分が稼ぐしかないと考えます。彼女自身はパートで何ら制約がないからです。

「以前、コンビニでバイトをしていたことがあったので、早速、近所のコンビニでバイトを始めました。そして緊急事態宣言が解除されてからは近くのスナックで。当時は20時まででしたけど、うちの近くのスナック、看板を下ろしてからも営業していたんですよ。ママと知り合いだったので週に3日ほど働かせてもらいました」

その間、夫には子どものめんどうをみるよう頼んでおいたのに、帰宅すると子どもたちがお腹をすかせてうろうろしていることもあったといいます。夫は彼女が下準備をしていった料理を子どもたちに食べさせず、インスタントものやパンなどを与えては、自分だけお酒を飲んで寝てしまっていたのです。

「誰の借金のために働いているのかわかってない。恩を着せるつもりはありません。家族だから助け合っていかなければいけない。でも夫にもきちんと協力してもらわなくては。借金返済のためにがんばるのも私、子どものめんどうをみるのも私じゃ、とてもじゃないけどやっていられない。それなら子どもたちを連れて実家に帰ったほうがマシです」

夫は自責の念にかられているのでしょう。でも、そんなことで落ち込む時間があったら子どもたちのめんどうをみてほしいというのが、現実を直視する女性の気持ちなのです。そのあたり、男女はいつもすれ違ってしまいがち。

通常に戻っても…

「6月に入って、夫は通常勤務に戻りましたが、出張や残業はまだまだ。私もパートが再開したのですが、このままではやはり生活しながら借金を返すのはむずかしい。夫が定時で帰ってくるなら、もう少し時給のいいスナックなどで働こうとも思っていますが、夫は賛成しないんですよね。だからといって彼に稼ぐ手立てがあるわけでもない」

この状態が続けば、近い将来、離婚が待っているだけだとハツネさんは言います。夫がそれほど深刻に考えているのかどうかも今はわからないそうです。

「一家のことなのに、もっといえば夫の責任が大きいのに、どうして私だけがこうカリカリしなくちゃいけないんだろう。そんな思いもあって少し疲れてきました。私がいちばん損をしない方法を考えたいけど、通常の生活に戻ってみれば悪い父親ではない。プレッシャーやストレスに弱い、生活力がないのは確かですが、そこは私が補えばいいのかなとも思うし」

ふうっと彼女はため息をついて、ぽろっとこう言いました。

「生きていくって大変ですよね」

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