社説(6/29):コロナ禍と介護/現場の不安に向き合おう

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 新型コロナウイルスの感染防止対策を巡り、資材やマンパワーの確保に十分な公的支援が得られなかった高齢者介護の現場で、「第2波」への危機感が高まっている。感染リスクにさらされながら、高齢者の生活を支えている介護職員の不安に真摯(しんし)に向き合い、持続可能な就労環境の整備を急ぐ必要がある。

 各地の介護施設では集団感染が相次ぎ、多くの高齢者が亡くなった。ほとんどの施設が家族との面会禁止などの対策を講じたが、マスクや消毒液などの資材が不足する中、持病を持つ高齢者らが重症化し、命を落としていった。

 東北でも十和田市の認知症グループホームや山形県大蔵村の特別養護老人ホームでクラスター(感染者集団)が発生。関係者の努力で高齢者への感染拡大は限定的だったが、一時は「介護崩壊」も現実味を帯びる事態となった。

 宮城県介護福祉士会が4月末から5月上旬、介護職員やケアマネジャーらを対象に行った緊急アンケートでは、現場の課題として約7割がマスクや消毒液など「衛生用品の入手」を挙げ、8割以上が「自分が感染し媒介者となる不安」を訴えた。一方で介護職員の「感染リスクへの不安と補償」は半数に満たず、現場で働く人々がいかに献身的に利用者を思いやっていたかがうかがえる。

 資材不足を巡る混乱は医療機関でも深刻化し、全国では院内感染も多発した。対応に追われる医療スタッフの窮状は注目され、政府は診療報酬の改善を含む救済策を次々と打ち出した。一例が重症者を受け入れた場合の入院料引き上げだ。

 これに比べて介護現場への手だてはどうか。先に成立した2020年度第2次補正予算案では、医療従事者と同様に最大20万円の慰労金支給が盛り込まれたものの、ほかに抜本的な支援策は見当たらない。

 もともと介護職員の平均月給は全産業平均に比べて約9万円低く、いまだに格差解消には至っていない。慢性的な人手不足も深刻で、感染拡大の影響で離職者も相次ぐ。慰労金という一時的な手当だけで、現場の労苦に報いているとは言い難い。

 介護保険制度は4月に誕生から20年を迎え、家族、とりわけ女性が丸抱えしてきた介護の社会化が大きく進んだ。にもかかわらず、介護職員の処遇改善は、福祉に携わる人々に特有の自己犠牲の心に依存する形で置き去りにされてきたと言わざるを得ない。

 厚生労働省は、介護施設での感染状況に関する全数調査さえ行っておらず、各施設でどう感染が広がったのか、どんな対策が必要だったのかを検証する手だてもない。

 感染症との闘いはこれからも続く。第2波、第3波での「介護崩壊」を防ぐため、職員の仕事とリスクを正しく評価し直すことが不可欠だ。