救命救急「6年連続日本一」の病院で院内感染 医療崩壊危機に、覚悟決め動いた民間病院

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診察室内に作られた陰圧スペース。中央の白い部分から手を入れ、PCR検査の検体を採取した=神戸市東灘区鴨子ケ原1、甲南医療センター(同センター提供)

 全国トップクラスの救命救急センターを誇る神戸市中央区の市立医療センター中央市民病院は4月、新型コロナウイルスで院内感染を起こし、同市内の救急医療態勢は逼迫(ひっぱく)した。同病院は救急対応を一時停止し、周辺病院は負担が高まり受け入れを断るケースも発生。救急現場が特に神経をとがらせたのは、コロナ感染が疑われる患者だった。感染の第2波に備え、PCR検査の充実を求める声も上がる。(霍見真一郎)

 厚生労働省による救命救急センターの評価で、中央市民病院は6年連続全国1位を堅持。その存在感から「最後のとりで」と呼ばれるが、院内感染の広がりを受け、4月中旬から2カ月近く、コロナ患者を除く通常救急の対応を原則停止した。

 同病院が救急車で受け入れた患者は、1月が844件、2月が746件。ところがコロナ対応を始めた3月は497件に減り、院内感染の発生で通常救急を止めた4月は109件にまで減少し、1月実績のわずか13%にとどまった。

 それまで受けていた3次救急患者は、神戸大病院(神戸市中央区)と兵庫県災害医療センター(同)が引き受けた。中山伸一・県災害医療センター長は「救急は3割程度増加したが、当院の重症者対応は3人同時が限界。断らざるを得ないケースも増えた」と打ち明ける。

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 中央市民病院は、軽症中心の「1次救急」や入院が必要な「2次救急」も受け入れており、特に2次救急は民間病院が支えた。

 神鋼記念病院(同)は3月、救急外来の患者のコロナ感染が翌日判明し、そのまま受け入れた。「肺炎で受診されたが、万一を考えて結核患者用の陰圧室に入れ、防護服で対応した。大部屋に入っていたら大変だった」と東山洋院長が振り返る。

 その後コロナ病床を拡大し、1病棟をコロナ専用に。中央市民病院で院内感染判明後の4月下旬には、10床分用意した感染者病床が埋まった。東山院長は「院内感染が起きれば経営に致命的な打撃がありうる。覚悟の上だった」と話す。

 一方、甲南医療センター(同市東灘区)も、コロナ患者を受け入れる方向で準備を進めていた。同センターの具英成院長が神鋼記念の東山院長に相談。ちょうどその頃、中央市民に続いて、神戸赤十字病院(同市中央区)でも院内感染が発生し、東山院長は「うちや甲南で院内感染が起きれば医療崩壊になる。コロナはうちがみる。甲南は2次救急を守って」と伝えた。

 甲南はコロナ以外の救急に尽力し、4月だけで385件の搬送を受け入れた。問題は、発熱症状などがある「コロナ疑い」の患者だった。疑い患者は全員PCR検査して陰性を確認したが、具院長は「感染を前提にした病床運用になり、コロナ患者を受け入れるのとほぼ同じだった」と語る。

 日本救急医学会の代表理事を務める大阪大病院高度救命救急センターの嶋津岳士センター長は「第2波に向け、効率的な患者収容の流れを考える必要がある。そのためには、PCR検査を充実させ、感染の有無を明確にすることも重要だ。コロナ対応の病院を1カ所に集中させるのはリスクが大きく、バックアップ体制の構築を急がなくてはならない」と指摘している。