楽観視できる海洋環境:海洋環境は回復できると研究で

世界の海の将来は、目も当てられないものだと言われることがある。ある研究によると、漁業は、2048年までに崩壊し、毎年排出され海を汚している800万トンのプラスチックごみが、繊細な海洋生態系に深刻な影響を与えているという。しかし、Natureに掲載された最新の研究は、海洋の将来について、これまでの見解に替わるもっと楽観的な見解を示している。もし人類がこの課題に取り組むことができれば、海洋環境は持続可能な形で2050年までに再建できるという。

研究者たちによると、成功の鍵は、生態系のダメージを回復させ、かつ気候変動を促進させる炭素の排出を抑えながら、海洋への影響と負荷を低減させることだ。

この研究では、塩水泥地、マングローブ、海藻類、サンゴ礁、コンブ類、カキ礁、漁業、大型動物類、深海の9つの側面から海洋を詳細に調査している。その上で、これらを修復し保護するための、重要かつ現実的な方法を提言している。

モルディブで、海藻中に佇むタツノオトシゴ。撮影:Vivienne Evans、提供:Blue Marine Foundation.

研究者たちは、減少した海洋生物数を回復するサクセスモデルについて言及している。例えば、国際的な野生動物の貿易に関する条約であるCITES(ワシントン条約)と、1982年の商業捕鯨モラトリアムによって、捕獲される絶滅危惧種が減ってきているとともに、これらの生物の重要な生息地の保護に寄与してきた。減少していた魚類の数も、適切に管理されることによって回復しつつある。

この研究では、将来における海洋の健全性について楽観的な視点を展開している一方で、回復させることが難しい部分もあると懸念もしている。例えば、サンゴ礁は、気候変動が原因で起きる白化現象がより進行し、損傷を受けたサンゴ礁は回復により時間とコストがかかる。しかし、この研究では、気温の変化や白化現象に強いサンゴ礁を見つける試みがなされていると述べている。

この研究者らは、海洋環境の修復は簡単に達成できるものではなく、安定した政策と巨大な投資、科学技術がたゆまぬ進歩をし続けることが必要だと述べている。短時間のうちに行動を起こすことも必要だ。

モルディブ、マングローブ林の空中写真。撮影:Andy Ball 、提供:Blue Marine Foundation

しかし、この研究の共著者で米国ヨーク大学の教授であるCallum Roberts氏によると、海洋環境修復における最大の課題は、気候変動の影響を緩和することだという。

Roberts氏は、Mongabayの取材に対し、「気候変動はあらゆることに影響を与える大きな問題です。なぜなら、気候変動は自然環境の回復を困難にさせますが、気候が変化を続けるにつれて、問題はさらに大きくなります。」「そのため、我々は自然環境を回復させるための取り組みを早急に行わなければいけません。それによって、人間社会が徐々に適応することが可能になり、気候が変化し続ける中にあっても自然環境が持ち堪え、繁栄することができる可能性が生まれるのです。」

こういった課題はあるものの、Roberts氏は、海洋は驚くほどの回復力があると信じているという。漁業や人間活動が禁止されている海洋保護区(MBAs)では、これが明らかだとRoberts氏は言う。

海藻の上にいるウニ。撮影:Shaha Hashim、提供:Blue Marine Foundation

「私は、局所的な海洋環境の回復がどのように進むか、そしてそれがいかに早く、見事に進行するところを見てきました。」「ある土地の海洋環境を修復させようとするとき、効果がどのように表れるかということはとても簡単に予想することができます。まず、数が増え、生息期間が長くなり、繫殖が活発になります。その後、海底や昆布の茂みでの生息域の構造が回復し、希少な生物が戻ってきます。」

今年は、第4回公海条約交渉国連海洋会議モナコブルー・イニシアチブ、海洋環境保護委員会を含む国際海事機関などの、海洋に関するいくつもの会議や交渉が行われ、「海洋スーパー・イヤー」となる予定だった。しかし、COVID-19のため、ほとんどが中止または延期となっている。

一匹だけで浅海を泳ぐジンベイザメ。撮影:Jess Rattle、提供:Blue Marine Foundation

Roberts氏は、まだ長期的な影響を判断するには早過ぎるとしているが、コロナパンデミックは、海洋を人間の脅威から免れさせているという側面もある。

「今、多くの漁船が岸につながれています。そして、これは海洋生物にとって間違いなく短期的なプラスとなります。」と彼は言う。「長期的にどうかということは分かりません。しかし、この危機が去った後のは、物事をよりよいものにするために我々がどうするべきかということについて、様々な思索が凝らされることになるでしょう。」

引用:

Duarte, C. M., Agusti, S., Barbier, E., Britten, G. L., Castilla, J. C., Gattuso, J.-P., … Worm, B. (2020). Rebuilding Marine Life. Nature, 580(7801), 39-51. doi:10.1038/s41586-020-2146-7

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モルディブ、海中の海藻。撮影:Ocean Culture LifeのMatt Porteous氏、提供:Blue Marine Foundation

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