なぜかU35男性に人気の「中野」「津田沼」「浦和」。日本人男性の企業戦士っぷりが浮き彫りに!?

いわゆる「人気の街ランキング」のバリエーションはさまざまあります。例えば大東建託の「その街に住んでいる人たちによる街の住みごこち」調査は首都圏の1224駅を対象に実際にその街に住む人を対象とした調査です。

さらにこの調査をウェブメディア「現代ビジネス」が企画記事で、「20歳以上35歳以下の単身者」「自ら契約する賃貸住宅に居住している」という条件で絞り込んだところ、「横浜」「恵比寿」「吉祥寺」などのいわゆる「住みたい街ランキング」とはまったく違う結果となったというのです。その結果がこちら。

駅名主要路線所在地1中野JR中央線東京都2津田沼GJR総武線千葉県3浦和JR京浜東北線埼玉県4荻窪JR中央本線東京都5調布京王線東京都6池袋JR山手線東京都7中野坂上東京メトロ丸ノ内線東京都8亀戸JR総武線東京都9松戸JR常磐線千葉県10上野Aつくばエクスプレス東京都

出典:現代ビジネス

※駅名の後のG(グループ)は2つの近接駅を統合、A(エリア)は3つ以上の近接駅を統合した意

「新中野」「新井薬師前」といった“隠れ駅”も「中野」人気を後押し

なんと第1位は中野駅(JR中央本線)。以下津田沼、浦和、荻窪……と続きます。ふだん目にする「住みたい街ランキング」とはずいぶん趣の違う「その街に住んでいる、U35男性の住みごこちランキング(U35男性編)」。よく見ると、他のランキングよりも利便性の高さが目につきます。

ランキング上位の駅にはどんな特徴があるのでしょうか。路線図に詳しいライターの井上マサキさんに話を聞いたところ、見えてきたのは、U35独身男性の企業戦士ぶりでした。

「1位の中野はJR中央本線、総武線、東京メトロ東西線という3つの路線が乗り入れています。中央本線は特快や快速など、特急以外のすべての電車が停まりますし、東西線は始発駅でもあり、東京駅への連絡駅となる大手町駅までは20分。JR中央線とほぼ遜色ありませんし、都心オフィスの要衝とも言うべき日本橋、茅場町にも停車します。こと通勤における利便性という意味では、ある意味中央線をも凌ぐと言っても過言ではありません」

しかもJR中央線の特別快速が停まる中野駅は、住環境としてもかなりの好立地。静謐という趣ではありませんが、駅からおよそ500メートル圏内、放射状にライフや西友、ピーコックなど7つのスーパーが点在しています。

北口にはアーケード商店街「サンモール」や、北側に続く「中野ブロードウェイ」の地下にも鮮魚店や青果店などが集まる地下商店街があります。生活必需品の買い物に便利な町なのは間違いありませんが、他にも「住む人にとって高評価を得られるポイント」があります。

「それは"隠れ駅"の存在です。南に1.4km行けば丸ノ内線の新中野駅がありますし、北に行けば西武新宿線の新井薬師前駅もある。最寄りが中野駅だとしても、住んでいるエリアや通勤経路によってはそうした隠れ駅も使うことができます」

2位の津田沼にも当てはまります。JR総武本線の津田沼駅は新京成線の新津田沼駅まで徒歩5分程度。京成本線の京成津田沼駅でも1.1kmなので徒歩14分程度。しかも津田沼駅は、通勤・通学時間帯には東京メトロ東西線も乗り入れているというのも、中野駅との共通点となります。

「加えて、津田沼の場合は東京方面への始発列車も多い。中野と同じように複数の駅を使うことができて、始発列車もある。始発で座って勤務先へと一本で行くことができれば、足りない睡眠時間を補うこともできます」

3位の浦和駅は「交通の便のよさ」こそ上位2駅と共通するものの、詳細に見ると少し傾向が違うと井上さんは言います。

「浦和駅にもJR宇都宮線、湘南新宿ライン、京浜東北線といった複数路線が乗り入れていますが、都心のオフィス街からの距離が少しある浦和の場合、よりダイナミックな分岐となっています。左回りの湘南新宿ライン、右回りの宇都宮線・京浜東北線路線の分岐が大きくなっています」

終電を逃しても、JR山手線の池袋駅から深夜1時20分発の深夜バスが出ています。お酒や深夜残業をこよなく愛する浦和人にとっては非常にありがたい存在……ですが、現在は新型コロナウイルス感染拡大の影響で運休中。再開を待ちましょう。

U35男性に人気の町の家賃相場は?

そして住むとなれば見逃せないのが、家賃です。地価公示価格で見ると、中野駅周辺は坪単価およそ424万円、津田沼駅は137万円となっていて、地価で3倍以上の開きがあります。ちなみに3位の浦和駅近くの地価公示価格は約160万円、4位の荻窪駅が348万円、5位の調布駅が155万円となっています。

各駅の家賃相場で徒歩10分、築10年以内の1DK物件の家賃を調べてみると、だいたい以下のような相場となっています。

中野駅11.2~13.3万円、津田沼駅6.5~7.3万円、浦和駅8.8~9万円、荻窪駅11.8~12.6万円、調布駅10.3~12.6万円(2020年6月下旬時点)。

家賃の相場としては、1位中野、4位荻窪、5位調布あたりは意外と大差なく、県外の浦和で2~3万下がり、津田沼でさらに2万円下がるというようなイメージです。

「一方、都心へのアクセスではそこまでの差はありません。東京駅をゴールとすると上位駅からのおよその所要時間は、中野駅17分(中央線)、津田沼駅31分(総武線快速)、浦和駅26分(上野東京ライン)、荻窪駅24分(中央線)、調布駅38分(京王線→中央線)となっています。トータルの移動時間を考えると乗車時間の比率はそれほど高くないように見えますが、移動時間は乗り換えにかかる時間や快速電車の本数にも左右されます」

通勤を前提に考えると、都心への移動距離も短く、中央特快も停まる上、駅舎が比較的コンパクトで乗り換え至便。南口の"隠れ駅"の新中野駅の近くには「鍋屋横丁」という江戸時代の参道から続く商店街があり、北口には「新井薬師」を別名とする梅照院というお寺の門前にも古くからの参道があり、この数年は周辺の店にも新陳代謝が起きて、新しい店が続々とオープンしています。

企業戦士としての平日の戦いに出向く環境は万全。地元密着型の飲食店も多く、平日晩や土日の充実ライフも期待できる――。U35男性にとって、中野駅が1位になるのは、当然の結果なのかもしれません。

井上マサキ

1975年生まれ。ライター。Webメディアや企業広報など幅広く執筆するかたわら、「路線図マニア」として書籍執筆やメディア出演なども行う。共著書に『たのしい路線図』(グラフィック社)、『日本の路線図』(三才ブックス)

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