あおり運転に厳罰

 「強弁術」のポイントを数学者の野崎昭弘さんは著書で列挙している。「相手の言うことを聞くな」「自分の言いたいことは繰り返せ」「脅し、泣き、しゃべりまくること」(中公新書「詭弁(きべん)論理学」)▲「強弁の勧め」ではない。野崎さんは「このようなワザの達人を、はびこらせてはならない」と言い、そのために「健全な常識」が要るとも言う。交通ルールを例に挙げ、「車で細い道から広い道に出るときは、広い道の通行を妨げない」といった常識が“重し”になると述べている▲困ったことに、健全な常識をものともしない強弁の達人もいる。とすれば、重しをぐんと重くするしかない。あおり運転の厳罰化を盛り込んだ改正道交法がきのう施行された。即刻、免許取り消しもあり得る▲3年前、東名高速道路で夫婦2人が亡くなった追突事故を思い出す。追い詰めた男は事故の前、パーキングエリアで駐車の仕方を注意され、逆上して追い掛けた▲逆恨み、言い掛かりの極みだろう。あおった相手に殴り掛かった別の事件で「前の車が遅くて、走るのを妨害された」と開き直った例もある▲急ブレーキ、急な車線変更、急な幅寄せ…。いきなり人を脅した者に「相手が悪い」という強弁はもう許されない。言い掛かりも、開き直りも、そろそろうせる頃だろう。(徹)


© 株式会社長崎新聞社