新型コロナ肺炎治療の最後の砦「エクモ」国内1400台のうち使われたのはたった120台!専門従事者不足で命救えない

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新型コロナウイルス感染の重症化で命を救う最後の砦とも言われる人工心肺「エクモ」が足りず、望んだ治療ができないというケースが4月(2020年)に相次いでいた。栃木・済生会宇都宮病院に搬送された重症の新型コロナウイルス患者は、1人暮らしの、これまで重い病歴のない高齢女性だった。入院から5日後、容体は急変。入院時にきれいだった肺のX線画像が真っ白に変わってしまうほど悪化したのだ。

担当した救急救命センター長の小倉崇以医師は、人工呼吸器だけでは回復が見込めないと診断し、エクモをつけたいと考えていた。しかし、この病院にエクモは1台だけで、それも別の患者に使用中だった。小倉医師はほかの病院の空きを調べたが、栃木県内の4台のエクモはすべてすでに使われていた。隣県の群馬県に1台の空きがあり、転院できないか問い合わせたが、群馬県でも状況は逼迫しており、しかも重症の高齢者を長距離搬送するのは難しいと、転院を断られた。

小倉医師は患者の家族を呼び、「非常に重篤な状態」であることを告げた。長女は「テレビで見たアメリカの薬『レムデシビル』を使って、母が実験台のようになっても構わないから治療を続けてほしい」と訴えた。

各病院は第2波に備えて大急ぎでトレーニング

国内にエクモは1400台あるとされていたが、専門知識や人員が必要なため、第1波のピークで使われたのは120台だった。エクモを扱う医師などで作る団体の代表・竹田晋浩医師は、エクモによる救命率は7割を超えたが、「人がいないとエクモの治療が提供できなくなります。何とかして、今の集中治療を行える状況を守り、確保してくことが大事」と訴えた。

栃木・宇都宮病院でエクモの使用ができなかった女性患者は、レムデシビルの投与で奇跡的に回復した。ガラス越しだが、家族との面会も実現した。その後、リハビリのために転院した。

小倉医師はエクモを扱える人材を増やすための活動を始めている。富山の病院では、第2波に備えて、新たに1台、エクモを増やし、トレーニングを始めている。

小倉医師は「(第1波の)あの経験を2度と繰り返さないために、医療のキャパシティを広げ、人を教育して育てていかなければなりません」と語った。

NHKクローズアップ現代+(2020年6月30日放送「第1波 知られざる生と死の現場~そのとき家族は 医師は~」)