旅行代の半額補助だけじゃない「Go to Travelキャンペーン」活用法

新型コロナウイルスの世界的流行はとどまることを知らず、世界の感染者は1,000万人を突破しました。日本でも感染第2波が警戒されているものの、世界的にみると感染の程度は緩やかであり、少しずつ日常を取り戻しています。

そんな中、さらなる消費の回復を後押しするべく、8月から政府主導の観光支援策「Go to Travelキャンペーン」が実施されます。このキャンペーンを投資で活用するにはどうすればよいでしょうか?


冷え込みが厳しい観光産業

新型コロナウイルスの影響は幅広い業種で見られますが、特に人の移動を伴い、近年では訪日外国人客の増加によって支えられていた観光産業の打撃は甚大です。

2020年に4,000万人を目標に掲げていた訪日外国人客数は2月から急激に悪化し、4月・5月は共に前年同月比99.9%減少という衝撃的な数値となっています。昨年の訪日外国人客の消費額が4.8兆円であることを考えると、経済的な打撃も大きいことがわかります。

また、日本人の国内旅行も全国を対象とした緊急事態宣言の影響で大きく減少しています。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、日本人の延べ宿泊者数は4月が80.9%減、5月が84.8%減と大幅に減少しています。移動が制限されていたため避けられなかった部分もありますが、大きな打撃であることは間違いありません。

需要の減少に伴い、雇用・企業への打撃も出始めています。雇用の面では、宿泊業・飲食サービス業の就業者数が4月は46万人減(▲11.0%)、5月は38万人減(▲9.2%)と大幅に減少しています。企業の面では、倒産動向にも色濃く影響が出ています。

帝国データバンクによると、6月29日時点でのコロナウイルス関連倒産は290件ですが、内訳を見ると最多が飲食店で46件、次いでホテル・旅館が43件と観光に関連する業態での倒産件数が目立って多くなっています。

このように、日本経済の立て直しに向けて観光業界の回復は急務となっています。

Go to Travelキャンペーンはどう使う?

「Go to Travelキャンペーン」は総予算1.7兆円で実施される、新型コロナウイルス収束後の経済回復を支援する「Go to キャンペーン」のうちの一つです。キャンペーン対象は宿泊を伴う旅行と日帰り旅行の両方で、旅行額の半額までが補助されます。上限額は宿泊を伴う場合が2万円、日帰りの場合は1万円で、70%が旅行代金の割引、30%が買い物代金を補助する商品券となる予定です。

株式会社ジェイトリップのアンケートによりますと、「Go to キャンペーン」を利用したいと答えた人の割合は86.9%に及んでおり、注目度の高さがうかがえます。また、いつごろ行きたいかという質問に対しては8月が37.6%、9月が21.5%、10月が14.1%と8月が圧倒的多数となっています。混雑を避けたい場合は8月以外の月が望ましいかもしれません。

このキャンペーンでは、1泊あたり最大2万円の補助が受けられることから、普段よりも旅行日数を増やしてもお得に旅行を楽しむことができます。

また、日帰り旅行が対象であることから新型コロナの感染拡大を機に注目を浴びている、気軽に行ける近場への旅行も魅力的なのではないでしょうか。相場の格言に「風が吹けば桶屋が儲かる」というものがありますが、一見投資には関係ないように思える経験が思わぬ投資アイデアを生むこともあります。これを機にいつも行かないようなところに行くことで、株式投資の利益にもつながるかもしれません。

投資チャンスがある業種は?

では、観光業の回復で恩恵を受けるのはどの業種でしょうか。まず浮かぶのは今回のキャンペーンを利用するのに必ず使われるオンライン旅行関連、あるいはキャンプなど外でのアクティビティの増加が予想されることアウトドア関連ではないでしょうか。

ただし、これらの銘柄は景気刺激策として観光業が対象となることを織り込み、すでにコロナショック前の株価の水準まで戻しているものも多くあります。「Go to キャンペーン」の開始をきっかけにさらなる物色となる可能性も高いですが、高値圏の銘柄の取引には注意が必要です。

また、人の移動の回復に伴って需要の回復が予想される空運、陸運もリバウンドを狙った買いが入る可能性があるのではないでしょうか。6月30日時点での業種別の値動きを3ヵ月前比で見てみると、空運業が最も低く▲13.4%、陸運業も4番目に低く▲2.8%と株価は低迷しています。空運業は国際線の回復には時間がかかりそうであることから、陸運業よりも期待値は高くないですが、出遅れセクターとして物色されるかもしれません。

加えて、中長期的にはREIT(不動産投資信託)も注目できるのではないでしょうか。東証に上場しているREIT全銘柄からなる東証REIT指数は新型コロナウイルス発生前には2,200pt台を超えていましたが、一時半値の1,100pt台まで暴落し、現在も戻りは弱く1,600pt台で推移しています。

REITの中でもホテルリート、商業施設系リートに注目です。共に緊急事態宣言による稼働率の低下、夏に予定されていたオリンピックの延期を嫌気して大幅に下落し、先行きも不透明であることから、戻りが限定的な銘柄も多く見受けられます。割安になっている銘柄はリバウンドが期待できることに加えて、リートは利回りが高い銘柄も多数あるため、長い目で見ると高い投資成果があがるかもしれません。

「Go to Travel キャンペーン」の開始に向けて、消費・投資の両面で恩恵を受けるために、いまから準備してみてはいかがでしょうか。

<文:Finatextグループアナリスト 菅原良介>

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