うな重の理由

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 メシ食いに行こうか、と上司や先輩に誘われたランチで、さて何を注文したものか、と“長考”に沈む。おそらく、ごちそうしてくれるはずだ、あまり安い物は失礼かな、でも高いのは気の毒だし、遠慮知らずと思われるのも気になる…誰にも経験がありそうだ▲17歳・藤井聡太七段の史上最年少タイトル獲得なるか-が注目される将棋の棋聖戦で、相手の渡辺明棋聖が昼食注文時に見せた「配慮」がちょっとした話題を呼んでいる▲先月8日に指された第1局、渡辺棋聖が選んだお昼はお代3600円ナリの「うな重」。なかなか豪華なチョイスの理由がいい▲後日の取材に「ある程度のものを頼んだ方が、相手は“手広い”という意味はあります」と、いかにも将棋指しっぽい言葉選びで真意を明かしている。格上で年長の自分が高い物を注文する方が、若い藤井七段の選択の幅が広がると考えたわけだ▲世間が期待する「藤井の快挙」は、渡辺さんにとって自らの失冠を意味する。逆風の吹く防衛戦で見せた心遣いは、余計な神経を使わず全力でぶつかってこい、簡単には負けない-との決意の表れでもあるのだろう▲こちらも藤井七段が挑む王位戦7番勝負が昨日開幕、初日のお昼は「三河鮮魚の海鮮丼」だったそうだ。書いてるうちにおなかが減ってきた。(智)