長崎・男児誘拐殺害17年 「風化させてはいけない」 市民ら手を合わせ涙

地蔵堂に向かって手を合わせる市民=1日午後2時31分、長崎市万才町

 長崎市で2003年、4歳男児が12歳の中学1年生に誘拐され、同市万才町の立体駐車場屋上から突き落とされて殺害された事件から1日で17年。事件現場そばの市道と地蔵堂には市民らが訪れ、男児を悼んだ。
 今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため市は献花台を置かなかったが、朝から花束やジュース、菓子を供える人、足を止め黙とうする人、手を合わせる人の姿があった。ある男性は数分間しゃがみ込み、腕で涙を拭った。
 加害少年を知る同市出身で福岡市在住の福居一兼(かずとも)さん(35)は、事件に心を痛め、息子が生まれてから帰省などの際に現場を訪ねる頻度が増したという。息子は4歳になった。「命に関することは丁寧に話すようにしている。次は息子と訪れたい」
 「この日が近づくと毎年ここに来る」。長崎市式見町の男性会社員(39)はジュース2本を地蔵堂に供え「痛ましく悲しい事件だった。風化させてはいけない」と静かに語った。諫早市の60代女性は、男児が生きていれば21歳になることに思いをはせた。「忘れられないでここに来た。今は何人がこの事件を知っているんだろう」
 地蔵堂を設置した長崎市立山1丁目の井村啓造さん(73)は知人の僧侶が地蔵堂前で読経する中、涙を流した。同市こどもみらい課の谷内貴代課長は、子どもを見守る活動について「社会全体で連携することが大切。地域の活動をできる限り支援したい」と述べた。

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