「野球の考え方が変わりました」オリ救世主・鈴木優らを生んだ中南米リーグ

オリックス・鈴木優(左)とレイズ・筒香嘉智【写真:宮脇広久、Getty Images】

オリックス鈴木が5回無安打無失点でプロ初勝利「向こうの人たちは配球に苦しまない」

プロ6年目で23歳のオリックス・鈴木優投手が1日の西武戦に先発し、5回無安打2四球無失点に抑えて念願のプロ初勝利を挙げた。2014年ドラフト9位で都立雪谷高から入団。都立高から直接プロ入りした投手が白星を挙げたのは史上初だが、転機は昨オフにプエルトリコで行われたウインターリーグへの参加だったという。

昨オフに約2か月間、T-岡田、漆原とともにプエルトリコに派遣された鈴木。現地では6試合に先発し1勝4敗、防御率6.75と成績はパッとしなかったが、「野球に対する考え方が変わりました。プエルトリコのの人たちには、勝っても負けても野球を楽しむ姿勢がありました。たとえば、向こうの人たちは配球に苦しまない。こう投げればこう打ち取れるはず、という風にどんどんプラスに考えていき、小さくならないんです」と説明する。

昨季までの1軍登坂は、ルーキーイヤーの2015年、翌16年、そして19年に1試合ずつの通算3試合のみ。今季は6月26日のロッテ戦で、先発の山岡が左脇腹を痛めて緊急降板した後を受け、1回1死から救援して3回2失点だった。「去年までなら、ロッテ戦も今日も、ガチガチに緊張していたと思うのですが、ワクワクして楽しかった。(プエルトリコへ派遣してくれた)球団に感謝してます。僕も6年目で勝負の年であることはわかっていますが、どうせやるなら楽しんでいこうと思っています」とラテンの風に吹かれた効果はてきめんのようだ。

筒香はドミニカ共和国で「ミスを恐れない重要性感じた」

NPB球団からプエルトリコといえば、2011年にソフトバンク・柳田、13年にソフトバンク・東浜、16年に巨人・岡本が派遣され、飛躍への足掛かりとした例がある。

また、同じラテンアメリカのドミニカ共和国のウインターリーグには、2015年に当時DeNAの筒香嘉智外野手(レイズ)が参戦した。同年の筒香は、チームの主将で4番という重責を担ってシーズンを通して活躍し、さらに国際大会「プレミア12」の日本代表にも選ばれ全試合出場。その上、間髪入れずにドミニカ共和国行きまで志願した。球団を通して「1年前にドミニカ共和国を訪れた際、子供から大人まで野球に対して素直に楽しんでいるという印象を持ちました。真剣勝負の中でも野球を楽しむことの大切さ、ミスを恐れずに積極的にプレーすることの重要さを改めて感じました」と説明していた。

帰国直後、本塁打を放った際の談話には必ず「パララカイエ」(中南米で使われているスペイン語で『球場の外へ』の意味。本塁打を指す)と添えていたほどで、16年にキャリアハイの44本塁打、110打点をマークし初のタイトル(2冠)を獲得してみせたのだった。大リーグにも莫大な数の人材を輩出しているドミニカ共和国での経験が、自身のメジャー移籍にも結びついていることは間違いないだろう。

図らずも、筒香も鈴木も「野球を楽しむことの大切さ」を口にした。近年、NPBの選手は豪州、台湾のウインターリーグにも派遣されており、リーグによってレベルも雰囲気も違うが、こうして自身の野球観を大きく変えてしまうケースもある。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

© 株式会社Creative2