独立リーグも頭を悩ませる“ウィズコロナ” 収入ダウン、人員削減…どう戦う?

NPBに続き6月20日に開幕したルートインBCリーグ【写真:小西亮】

追われる対応…球団によってはスタッフ5人のところも

地方球場にも、白球の音が帰ってきた。NPBに続き、プロ野球独立リーグ「ルートインBCリーグ」が2か月遅れで6月20、21日の両日に開幕。一部で早くも観客を入れた球場もあったが、大半が無観客でのスタートとなった。日程やレギュレーションを変更し、現場では十分とは言えない人員の中で感染予防対策と試合運営の両立に追われる中、選手たちはNPB入りへのアピールに励むという異例のシーズンになる。

梅雨雲の間から時折日が差す栃木県営球場。昨季リーグ優勝を果たした栃木ゴールデンブレーブスは6月21日、埼玉武蔵ヒートベアーズとの開幕戦を迎えた。ベンチ内にいるのは首脳陣と出場選手のみ。守備で選手がグラウンドに出払うと、がらんとしている。1万5000人超を収容するスタンドに目をやると、地元を中心としたメディアとわずかにNPBのスカウトの姿。打球音や選手たちの声ははっきり聞き取れ、2時間22分の投手戦が繰り広げられた。

来場の関係者には検温、消毒、体調チェック用紙の記入を徹底。感染予防に気を配りながらの試合運営で、当然スタッフの仕事量は増える。栃木の広報担当者は「うちは、まだ人員が20人ほどはいるので回せていますが、球団さんによっては同じことを5人くらいでやらなきゃいけない場合もあると思います」という。現在は無観客のため関係者は限られるが、栃木でも7月中旬には観客を動員しての開催を検討中。観戦者への対応はより神経を使い、人員も増えることになる。

「球場ごとに事情も違ってくるので、個々の対策を考えなければいけません」。栃木の江部達也球団社長は“withコロナ”に向けた対応の難しさを実感している。座席が個別になっている場合は、座れない座席に目印をつけるなどしてソーシャルディスタンスが確保しやすいが、球場によってはベンチ状になっている座席もある。「今までもスタンドの担当の職員はいて『もう少し詰めて座ってください』とお声かけしていましたが、これからは『離れて座ってください』ということになるんでしょう」。国が示すイベントの開催基準に則りながら、受け入れ態勢を整えていく。

栃木の江部社長「『料金はそのままでいいよ』と言ってくださる企業の方々も多い」

チケット収入は球団運営に欠かせない大事な財源。栃木では興行収入が全体のおよそ35%を占める。そもそも今季は試合数が10試合減。仮に無観客が長引けば、経営へのダメージも大きくなる。さらに、運営費の半分以上となる65%を占めるのが、スポンサー収入。昨季リーグ王者の栃木は、大小約140社からの支援を受け、前年の20%増を見込んでいたが、コロナ禍でスポンサーの経営状況も悪化。各企業を回り、返金対応をとるケースもあるという。その反面、江部社長は暖かさにも救われたと話す。「『痛みは同じなんだから、料金はそのままでいいよ』と言ってくださる企業の方々も多くて」。単なる一野球チームではなく、団結してコロナを乗り越えていくための象徴としての責務を改めて感じる。

一方、チームも難しい戦いが続く。試合数が減っただけでなく、従来の東西2地区から東中西の3地区に細分化。さらに各地区の4チームを2つに分けた6グループ制に。遠征の移動距離を少なくするため、近隣球団との対戦が極端に多くなる。栃木は、同じ「東地区グループA」の茨城アストロプラネッツと全60試合のうち40試合を戦う。寺内崇幸監督も「マンネリ化はするだろうし、集中力が切れることもあるかもしれない」と危惧。選手の身体的なコンディションだけでなく、モチベーション面にも気を配っていく必要性を挙げ「この状況を乗り越えられたら、チームとしても個人としても成長できるはず」と見据える。

試合は7回成立で、2時間45分で打ち切る。雨天中止などの場合は、状況に応じてダブルヘッダーも組まれる。独立リーグでは中継ぎ投手もあらかじめ登板が決められている場合があるだけに、出場機会も当然流動的になる。それでも、NPB入りに向けたアピールの場が用意されたことだけでもありがたいとみる選手も少なくない。現状では高校や大学、社会人も本格的な試合が再開していない中で「例年よりスカウトの目に留まりやすくなるのかもしれない」と期待を抱く声もある。シーズンは10月まで。選手もスタッフも、試行錯誤を続けていく。(小西亮 / Ryo Konishi)

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