梅雨明け、炎天下のマスク着用は要警戒 熱中症、子どもは高リスク 医師提唱「3トル」とは

 夏の本格的な暑さ到来を前に、気になるのは、マスクとの上手な付き合い方だ。新型コロナウイルス対策として欠かせない一方で、熱中症への注意も怠れない。気温が一気に上がる梅雨明け直後はより警戒が必要だ。マスクをした状態での熱中症リスクは、大人と子どもで異なるといい、専門家は「3トル」を呼び掛ける。どんな内容なのだろうか。(共同通信=松本鉄兵)

日傘を差して歩く人たち=6月8日、福岡県久留米市

  「外出自粛で体が暑さに慣れていないことに加えて、マスク着用で例年以上に熱中症の患者が増えると思う。梅雨が明けて炎天下になると危ないですね」

  済生会横浜市東部病院・患者支援センター長の谷口英喜医師は、警鐘を鳴らす。

  熱中症は、高い温度や湿度によって体内の水分や塩分といったバランスが崩れ、体温調節機能が低下して生じる不調の総称だ。目まいや頭痛、発熱などの症状があり、死亡に至ることもある。

  谷口医師は「熱中症は、呼吸器症状が少ないというだけで、新型コロナ感染症の軽度の症状に似ている」と説明。熱中症にならないように気を付けることで、医師がコロナ感染の可能性を早期に疑えることにつながると話す。

  気象庁によると、7~9月は全国的に厳しい暑さが予想されている。本格的な夏を前に、熱中症患者は既に報告が相次いでいる。総務省消防庁によると、6月1日~7月12日に熱中症で救急搬送されたのは全国で7884人。約6割が65歳以上の高齢者だった。

  ただ谷口医師はこう指摘する。「マスクを着用した状態では、大人と子どもでリスクが異なる」。大人の場合、マスクによって体温が上がり熱中症になるケースは珍しいと話す。心配なのは、マスクの着用で水分補給の機会が減ったり、喉が渇きにくくなったりすることだと言う。脱水症から熱中症になることが考えられ、特に高齢者は注意したい。

ミストを浴びながら暑さをしのぐ人たち=6月15日、JR甲府駅前

  一方、子どもは、大人以上に警戒が必要だ。胸郭が未発達のため、マスクの着用で呼吸への負担が増し、体力を消耗しやすい。また子どもは、息を吐くことで体温調整している面があり、マスクによって熱がこもり、体温が上昇しやすくなる恐れがあるという。

  集団での登下校は、子どもに無理を強いることになりやすい。一人の児童が途中で立ち止まり水分補給したり、休んだりしづらいからだ。谷口医師は「多少の遅刻は容認してあげてほしい。また距離を取って歩けばマスクを外しても良いのではないか」と話す。エアコンがない教室も危険だという。周囲の大人がマスクを外せる環境をつくってあげ、こまめな水分補給を促すことが大切だ。

  谷口医師は外出時に心がける「三つの取る」を提唱する。すなわち①人とはなるべく2メートル以上の距離を取り、②十分な距離を確保したら、マスクを外す(取る)、そして③水分を取る-の「3トル」だ。特に高齢者の場合、薬を飲むように時間を決めて水分を取ってほしいという。

  厚生労働省も、新型コロナを想定した「新しい生活様式」での熱中症予防のポイントを公表している。この中で、屋外で、人と十分な距離(少なくとも2メートル以上)が確保できる場合には、マスクを外すよう促している。また着用しているときには、強い負荷がかかる運動などを避け、こまめな水分補給が必要だとしている。同時にエアコンを付けていても、窓を開けるなどして換気を確保した上で、温度調整をするよう訴えている。

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  谷口医師は、医療関係者でつくる「教えて!『かくれ脱水』委員会」の副委員長として、熱中症予防の啓発に取り組んでいる。同委員会のサイトでは熱中症予防のポイントなどを解説している。URLhttps://www.kakuredassui.jp/

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