【THIS IS MY CLUB】清水エスパルス・西部洋平は見た!クラモフスキー体制での「大きな変化」

7月4日に再開される2020シーズンの明治安田生命J1リーグ。

新型コロナウイルスによる影響は大きいが、それだけでなく今年も様々な変化があった。

清水エスパルスは今年、2019シーズンの王者である横浜F・マリノスでヘッドコーチを務めていたピーター・クラモフスキー監督を招聘。

昨季までとは打って変わった、攻撃マインドあふれる「新生・清水エスパルス」は今季J1の見所の一つだ。

Qolyは今回、「DAZN Jリーグ推進委員会」の一員としてメディア連動企画「THIS IS MY CLUB -FOR RESTART WITH LOVE-」に参画。

リスタートに向けたJリーグクラブの、今だからこそ届けたい“生の声”をお伝えする。

今回話を聞いたのは、清水エスパルスの西部洋平。

7年間過ごした清水を一時離れたものの、2016年に復帰。現在39歳でチーム最年長のゴールキーパーに、クラモフスキー監督を迎え、新たなスタイルにチャレンジしているチームの“変化”などを聞いてみた。

(取材日:2020年6月22日)

「道をしっかり作ってくれる」クラモフスキー監督

――今シーズン、Jリーグは開幕してすぐ中断となってしまいました。中断と聞いたときはどんな心境でしたか?

中断ということ自体に馴染みがなかったので実感が全然湧かなかったです。当初はすぐに始まるのではないかと思っていましたし、ここまでの状況になることは想像していませんでした。

――自粛期間中の過ごし方は?

とにかく子供といました。子供はこの状況を結構喜んでくれて。奥さんはどうか分からないですけど(笑)。

普段であれば朝に出て、夕飯前に帰ってという感じですが、外に出られないので朝からずっと子供と遊んでいたりしていましたね。その辺は逆に有意義には使えたのかなと思います。

――そうした生活の中で、感じたことはありましたか?これだけサッカーから離れることは今までなかったと思います。

ありきたりかもしれませんが、サッカーをプレーしたり、ファン・サポーターのいるスタジアムで試合ができたりすることがどれだけ恵まれていて、幸せだったのか…。

本当にこうなってみないと分からなかったことが多かったです。当たり前だったことが当たり前ではなくなり、改めて考え直させられました。プレーしたいという熱や欲求がこの期間で増したことは間違いないです。

――フィジカル面の維持で気をつけていたことは?

僕は休みの間に食べてもそんなに太らず、逆に体重が落ちてしまうくらいなんです。運動をしないと食欲があまり湧かないタイプで。だから、しっかり食べて栄養を採ることを考えていました。

ただ中断期間が明けて、清水エスパルスは体脂肪や体重を結構細かく測るのですが、やっぱり増えていましたね(笑)。ストレスが溜まらないようなるべく美味しいものを食べていましたし、これだけ長い時間、しかも家ということもあってキープすることは難しかったです。練習が再開して今はだいぶ戻りました。

筋トレなどはチームから与えられたメニューがあったのでそれを毎日しっかりこなすような形でやっていました。

――今年就任したピーター・クラモフスキー監督は選手個々のデータや数字を見るタイプですか?

監督が実際にそれを見ているかは正直分かりません。ただ、トレーナーの方がきっちりデータを管理していて、細かく見てくれているので監督も見ているのではないかなと思います。

――すごく昔な気がしますが、中断前、J1開幕戦となったFC東京戦(1-3で敗戦)の印象はどうでしたか?

クラモフスキー監督が求めていることをやれた部分が半分。ダメだったときにどうするかといった課題が半分という印象でした。

やられ方は強烈でしたがネガティブになるようなゲームでは全然なかったですし、選手が「思ったよりできた」と手ごたえを掴んだ部分も大きかったです。下を向くような感じはまったくなかったですね。

――昨季王者の横浜F・マリノスからやってきたクラモフスキー監督はどんな監督です?

とにかくブレないです。本当に芯がしっかりしているというか、自分の中でやりたいサッカーが確立されていて、まったくブレることなくやっていますね。

あと、コミュニケーションをしっかり取ってくれる監督で、意外と気さくにいろんな選手と話しています。意外と言ったら失礼かもしれませんが(笑)、初めて会ったときの印象だともっと線を引くタイプなのかなと僕は勝手に思っていたので。いい監督です。

――監督が代わって選手もかなり入れ替わりました。どんな変化がチームに生まれていますか?

正直基礎のところ以外すべてが変わりました。サッカー自体が変わりましたし、メンタルの部分も今ものすごく変わっていて、すべてが良い方向に進んでいると感じます。

――メンタルの部分の変化は、より攻撃的な姿勢になったとかそういうことでしょうか?

すごく難しいのですが、今までも「本気で優勝したい」という思いは選手全員が持っていたと思いますし、「タイトルを獲りたい」など口に出していた選手もいました。でも今は漠然とではなく、具体的な形で監督がそれを提示してくれています。

「こうやればチャンピオンに近づくんだよ」という道をしっかり作ってくれていることが実感できるので、選手も「今までの考え方ではダメなんだ」と意識が変わりました。ここ最近特にその変化を感じていて、練習もピリッとしていて全体の集中力が高いです。

――西部選手は先日、トレーニングマッチで解説をされていましたね。まだコンディションが整っていない中でのゲームだったと思いますが、上から見ていてどんな印象でしたか?

監督から求められていることは結構できています。相手陣にできるだけ入ってポゼッションすることや、後ろからのビルドアップなど。ここまで積み上げてきたことはできているのですが、想像しないことが起きたときに臨機応変に対応できていないのが正直なところです。

これは、今のサッカーを継続していく上でものすごく重要なことです。トレーニングマッチで各自がそこに気づけたと思いますし、逆に状況をイメージしながらプレーできないようであればダメなまま終わってしまいます。これから修正能力を身につけていく必要はあるかなと見ていて感じました。

――そこは実戦でないとなかなか積み重ねていけない部分でもありますものね。

このサッカーはそんなに簡単ではないですし、ポゼッションするチームは最初苦戦することが多いので時間は多少かかると思います。

新たな清水エスパルスとともに

――GKに求められる役割も変わったというか、やるべきことが増えたのではないかと思います。西部選手はどのような形で取り組んでいますか?

僕は川崎フロンターレで似たようなサッカーを経験していました。そのときの風間八宏監督だとGKはそこまで攻撃的な感じではなかったのですが、ポゼッションのやり方などある程度のことは経験できていたので、僕自身はまったく違和感なく取り組めています。

求められていることはやれていますし、そこにプラスして、ハイラインなので裏に出てくるボールを積極的に前へ出て処理することを考えながらプレーしています。

どちらかというと好きなサッカーですし、僕は役割とか「これをやってほしい」とはっきり言われたほうが応えやすいのでそういう意味でもやりやすいです。チームのグループとしても求められていることがはっきりしていますから、皆それに向けて頑張っています。

――GKのポジション争いは熾烈だと思います。西部選手の中でライバルに「ここだけは負けない」という強みはどこでしょう?

そうですね…。経験と言ったらありがちですし、年齢的なものもありますけどやっぱりそこですかね。どんな状況になっても対応できることは強みです。

あとはDFを動かすコーチングですね。身体能力は年齢とともに徐々に落ちてくる部分が当然あるので、その中で身につけてきたコーチングは自分の持ち味かなと思います。

※チーム最年長の西部。今年の清水エスパルスは人員だけでも大幅な入れ替わりがあっただけに、彼のような選手がピッチ内外で果たす役割は大きい。

――西部選手は2004年から2010年まで清水エスパルスに在籍し、一度離れたあと(※湘南ベルマーレで1年、川崎フロンターレで4年プレー)、2016年に復帰しました。清水へ戻ってきた理由は?

理由はすごくたくさんあるのですが、一番は単純に、力になりたかったです。

清水との契約が一度終わって、湘南、そして川崎でいい経験をさせてもらいました。自分のプレーにまた自信を持てるようになってきたんですが、一方で清水はJ2降格が決まるなど苦しんでいた時期でした。

自分の中ではいつかエスパルスに戻りたい気持ちはずっとあり、「今の自分だったら」という思いが強かったので、こちらから声をかけさせてもらいました。

――清水エスパルスはどんなクラブですか?

歴史はやっぱりスゴイです。昔から特徴のあるサッカーをしていて、僕が小さい頃から見ていたようなレジェンドもたくさんいました。その方々が土台を作ってくれたおかげで、街のあらゆるところに“オレンジ”が存在する今があるのだと感じています。

――今年から社長が代わり、山室晋也社長になりました。その辺りの変化は感じますか?

すでにエイプリルフールなどで積極的にやっていただいているみたいですが(笑)、こういった状況なのでこれからより実感していくことになると思います。ファン・サポーターの方との距離もこれまで以上に近くなると思いますし、僕たちも楽しみにしています。

エンブレムやチームバスのデザインなどを含め、今年は本当にいろいろなことが新しくなりました。

――そうした中で迎えるリーグ再開初戦、清水エスパルスは無観客のリモートマッチですが、名古屋グランパスとホームで対戦します。お互いに戦い方が1年前に比べるとだいぶ変わりました。

やっていたことがちょうど逆になったのかなと(笑)。これまでとは違う、まったく読めない試合展開になりそうな予感がしています。

名古屋のFC岐阜とのトレーニングマッチが配信されていたので見ましたが、結構仕上がっている印象は受けました。スコアはそこまで動きませんでしたけど、コンディションも上がっていてハードに追い込んでいるのが伝わってきました。

打ち合いになっても堅いゲームになっても対応できるようにしなければいけないと思います。

――清水としては今年、前へ出ていく姿勢が大事になりそうです?

どこまで言っていいのか分かりませんが(笑)、そうですね。基本的な戦い方はやっぱり、速く相手の陣地でボールを奪って、速く攻める。そこをベースしつつ、守るところは守ってという感じだと思います。

点を取られてもゴールを決めに行くのが今年の見どころです。相手よりいかに多くのゴールを決め、勝ちゲームを増やすか。まずはそこですね。

――再開に向けて、ファン・サポーターに「特にここを見てほしい!」というところを最後に教えてください。

見てほしいのは先ほども少し言ったのですが、選手のメンタルの部分です。新しいサッカーにチャレンジしていますし、選手個々の技術も上がっていると思います。ただ今年は、試合に勝ちたい“気持ち”が違います。

ボールに対する執着心など、僕が見ていても昨年とは明らかに変わりました。こういった状況の中で少しでもそこを感じていただければと思います。

西部 洋平
1980年12月1日生まれ(39歳)
清水エスパルス所属

2020 明治安田生命J1リーグ 第2節
清水エスパルスvs名古屋グランパス
7月4日(土)18:00キックオフ

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