河北抄(7/3):東北学院大から「津波が来た海辺」と題する…

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 東北学院大から「津波が来た海辺」と題する冊子が届いた。東日本大震災から間もなく10年になる。当時の様子のことかと思ったら、よみがえった草花、動物をつぶさに記録した労作だった。

 執筆者は22人、仙台市宮城野区の新浜を歩いて観察した。上空から見ると縦じま模様をしている。ハマヒルガオの咲く浜辺、クロマツ群、貞山堀、湿原、人の暮らす平野がきれいに並列する。

 「驚いたことに、被災後すぐの春の訪れとともに花々の開花、虫の羽音、鳥のさえずり、小魚の遊泳が広がりを増していった」。編集した平吹喜彦教授(景観生態学)はこう記述する。

 「砂浜海岸エコトーン」と呼ぶ帯状の空間にヒントがある。多様で複雑、しなやかな構造によって津波は行き先を見失い、破壊力を弱めた。自然の持つ力は底知れない。

 土地の人々がクロマツを植え、手入れしてきたと背景も付け添えた。ここには生態との共生がある。地元に伝わる「新浜っ子の心意気」。それは、先人より代々伝わる知恵のことだった。