異例の60試合制シーズンに挑戦する各球団のGMたち

ブライアン・キャッシュマンは、ヤンキースのゼネラル・マネージャー(GM)に就任して今年が23年目のシーズンとなる。一方、アストロズのジェームス・クリックGMは就任してからまだ6ヶ月しか経っていない。しかし、今年に限ってはGM経験の差はそれほど大きな問題とはならないかもしれない。60試合制のシーズンを経験したことのあるGMなど存在しないからだ。

60人の「プレーヤー・プール」、予備選手3人の「タクシー・スクワッド」、8月31日に変更されたトレード・デッドラインなど、今年のメジャーリーグには各球団のGMが対応しなければならない新ルールが非常に多い。クリックが「我々が頼れる経験なんてほとんどない。GM経験が1年か20年かなんてことは大した問題じゃないんだ」と語るのは、そのためだ。

60人の選手を登録する「プレーヤー・プール」だけを見ても、各球団の取り組み方は様々である。有望株に貴重な経験を積ませるべく、多くの有望株を「プレーヤー・プール」に登録している球団がある一方、今年中にメジャーの戦力として計算できる有望株のみを登録している球団もある。

選手を「プレーヤー・プール」から外す際には、トレードや解雇など、その選手が他球団へ流出するリスクを避けられない。キャッシュマンは「故障や新型コロナウイルスの感染によって新たな選手が必要になった場合、短いシーズンのために若い選手を失う危険性がある」とそのリスクを考慮し、「プレーヤー・プール」に登録する有望株は必要最小限にとどめている。

また、8月31日に変更されたトレード・デッドラインでも、難しい判断を強いられることになる。通常であれば、開幕からの4ヶ月でチームのニーズを判断し、残り2ヶ月(ポストシーズンも含めれば3ヶ月)のために補強を行うことになる。ところが、今年は開幕からの2ヶ月でチーム状況を正しく把握する必要があるのだ。原則として「プレーヤー・プール」内の選手しかトレードできないというルールの存在も、各GMの動きを難しくすることだろう。

各球団には2020年シーズンの運営マニュアルとして101ページにも及ぶ文書が配布されている。レッドソックスのチーフ・ベースボール・オフィサーであるチェイム・ブルームは、球団フロント内で手分けをして、このマニュアルの内容を正しく把握することに努めているという。

「マニュアルを読むことと、そのルールのなかでどのように生き抜いていくかということは全く別の問題だ」とブルームは語る。異例の状況で行われる2020年シーズンは、実際にプレーする選手たちだけでなく、GMを中心とした球団フロント陣にとってもチャレンジの1年となりそうだ。

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