イルカ自ら健康チェック かごしま水族館

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体重計に自ら乗るイルカのカール=鹿児島市のかごしま水族館

 鹿児島市のかごしま水族館は、飼育する生き物に協力してもらい健康状態を調べる「ハズバンダリー・トレーニング」に、開館時の23年前から取り組んでいる。信頼関係を築くのが重要で、飼育員たちは生き物とのコミュニケーションの取り方を日夜研究中だ。

 検温は毎朝、便検は2週間ごと、採血は3カ月に1回-。イルカの健康診断は、ほかにも胃液検査や呼気検査など全部で8種類ある。これらの検査にイルカたちはおなかを見せたり、横向きになったり飼育員に協力する。

 6月23日には体重測定があった。中村政之さん(35)が後ろに下がりながら右手で「トリック」と呼ばれる合図を送ると、雌のカールは水しぶきを上げながらプール脇に置いた計測台に自ら胴体を乗せた。デジタル計は288.5キロを表示。大人数人がかりでも、この巨体を力で押さえ込むのは難しいという。

 「30年ほど前なら、プールの水を抜き、網を使って採血していた。当時に比べると、健康管理のやり方は格段に進歩している」。佐々木章館長(53)は、石川県の水族館でイルカ担当として働いていた頃を振り返った。

 イルカに検査しやすい態勢を維持してもらうために、飼育員はトリックを「正しい行動」だと理解させて、「よくできました」と声を掛ける代わりにホイッスルを吹く。ショーで見せる前方宙返りもトリックの一つ。全部で約80種類ある。

 獣医師の大塚美加さん(49)は「間違った動作をしても叱ることは一切しない。『とにかく褒める』を繰り返して動きを覚えてもらう」と力を込める。成功体験を積み重ねながら信頼関係を築くという。

 水族館では、ハズバンダリー・トレーニングをゴマフアザラシやジンベエザメにも実践中。ほかの大型の生き物にも応用可能か研究を続けている。