チームラボ代表 猪子寿之「奈良の大仏を作ったような…」コロナ禍で手がけた新作を語る

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禁酒法の時代に、こっそり営業していたBAR「SPEAKEASY」。2020年の東京の街にも、そんなひそかなBARがありました。月曜から木曜の深夜1時にオープンする“ラジオの中のBAR”「TOKYO SPEAKEASY」。各界の大物ゲストが訪れ、ここでしか話せないトークを展開するとか、しないとか……。

TOKYO FMの番組「TOKYO SPEAKEASY」6月24日(水)のお客様は、アートコレクティブ・チームラボ代表の猪子寿之(いのこ・としゆき)さん、予防医学研究者・石川善樹(いしかわ・よしき)さん。ここでは、新型コロナウイスが蔓延する中国・マカオで手がけた「チームラボの新作」について語りました。
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(左から)猪子寿之さん、石川善樹さん

◆コロナ禍のマカオで「意味を感じながら作っていた」(猪子)
石川:マカオで、新たなアート展「teamLab SuperNature Macao(チームラボ スーパーネイチャー マカオ)」(2020年6月15日(月)ソフトオープン)を始めたそうですね。

猪子:チームラボの新作「質量のない雲、彫刻と生命の間」という作品を見ていただきたいです。

大きな“白い塊”が空間に浮いている作品です。普通は、軽い風船のように、1回浮き上がると天井にぶつかるまで上がっちゃうだけだけど、これは地面に沈むことも天井まで上がりきることもなく、空間にでかい塊のまま浮き続けるんです。もちろん、なかに人が入ると“穴”は開くけど。

石川:雲のなかに入れるんですか?

猪子:バンバン入れる。動画にも人が出入りするシーンがある。

石川:“うわ、苦しい……”ってなりません?

猪子:うーん。(人によっては)目を開けて、どういう状況か見たらパニックになるかも?苦しくはないと思うんだけど、精神的には苦しいかもしれない(笑)。出口もどっちかわからなくなるし。

石川:(目の前が真っ白になる)そんな経験なんて、ないですもんね。ちょうど動画を観ているのですが、おもしろいですね。何でこんなに雲がフワフワ動いているんですか?

猪子:マカオにオープンした新しいアート展の施設名が「チームラボ スーパーネイチャー マカオ」っていうんだけど、生・宇宙・物理のエネルギー状態のようなものが、生命とよく似た状態を無理矢理作り上げることで、不自然な状況を作り出しているのね。

実は、今年の1月~4月ぐらいまでマカオにいて。

石川:それは、コロナでかなり大変なときでしたね。

猪子:当時は情報がなくて、どんな病気かわからないし、(チームラボの)メンバーもいるし。でも、この作品を作ることに、すごく意味を感じながら作っていた。

例えば、奈良時代にも疫病(天然痘)が流行ったけど、流行りすぎて(世に蔓延する疫病から人々を救い、国家の安寧を願うために)奈良の大仏を作るわけだよね。

たぶん人って、怖すぎる状況に陥ったときに、“死後の世界ってなんだろう……もしかするといい世界かもしれない”などと考えて、死後の世界を美しく描くことで、死への恐怖をやわらげているんじゃないかなと。例えば、宗教の役割もそういうところにあるんじゃないかなと思って。

この作品は、生命(=白い塊)が生まれて、やがては崩壊しちゃうんだけど、生まれたり、死んだりを繰り返しているなかで、“死の恐怖”のようなものが、やわらいでいくようなことを思いながら作ったんです。

石川:おもしろいですね。こういうことを言うと、無味乾燥になっちゃうかもしれないですけど、科学がどのように“宗教の役割”を定義するか知ったとき、びっくりしたんです。“そうなのか!”って。

超シンプルに言うと、宗教というのは、“現世に対する期待値を下げる。現世の苦しみは避けがたい当然のものであり、幻想をみんなに与える”ということなんですね。

つまり、今生きているこの世界(現世)の期待値を下げて、死後の世界に対する期待値を上げると。

例えば、イスラム教では飲酒が禁止されていますが、どういう教えかと言うと、“現世で酒を我慢したら、死んだら酒飲み放題”という教えなんです。何かすごくないですか? “死後に酒を飲むために今我慢せよ”と。

◆作品のなかにいると“コロナの恐怖”がやわらいだ(猪子)
猪子:当時(新型コロナウイルスが蔓延するマカオで)、ぶっちゃけ怖がったりしたメンバーもいっぱいいて、“どうしようかな”って迷ったときに思ったのは、“死後の世界を美しく描く”、もしくは“死後の世界がある”とすることが大きな役割のような気がして。死後の世界があると思えた瞬間、死の恐怖はやわらぐというか。それがさらに美しかったり、いいものだったりすると、よりやわらぐと。

例えば、原点に死後の世界があるとします。日本人は、いくら無宗教が多いとは言っても、“死後の世界は絶対ない”と思っている人は案外少ない。作品を作りながら、“死後の世界をほんのちょっとでも信じていることが、何らかの宗教的世界観を信じていることなんだな”と。そう考えると、なんやかんや宗教的影響をすごく受けているのかなとか思った。

石川:そうですよね。日本人は、神社とかすごく行きますし。

猪子:何か宗教的世界観を、ある程度は信じているのかな? とか思いながら作っていました。

石川:おもしろいですね。それで、マカオの雲の作品は、美しい死後の世界を描いてみたということですか?

猪子:いや、そんな一般的な美しい死後の世界を描いていたわけじゃないんだけど、何だろう……大きな白い塊(=生命)が、真っ白な海からグオーって浮かび上がってきて、空中に1時間ぐらい浮き続けるんです。なかに人が入って(その後に、くっついたり、離れたりを繰り返しながら)自己治癒をして、下がっていく。ただ、人がたくさん入ったり、何やかんやしていると、1時間も持たずに壊れていく。そうすると、また(次の白い塊を)生むんですけど、生まれては死んで、生まれては死んで――。このなかにいると、変な話、“自分自身の恐怖”“コロナの怖さ”みたいなものが、やわらぐんです。

石川:なるほどね。

猪子:まぁ、こういう状況で、こういうものを作っていることに対して、“意味がある”と思いたかったんじゃないですかね(笑)。“1,300年くらい前に、奈良の大仏を作ったようなことだ”と思いながら作品を作って、後付けで意味を作っていたっていう話ですね(笑)。

石川:その率直な「後付けなんだ」はいいですね(笑)。でも、最初によくわからないものを作って、よくわからない現象を見つけて、あとから何なんだろう? って考えるのは、科学そのものでもありますしね。

猪子:うん。

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来週の「TOKYO SPEAKEASY」のお客様は……

7月6日(月)三吉彩花さん(女優)&松岡広大さん(俳優)
7月7日(火)澤和樹さん(東京藝術大学・学長) &隈研吾さん(建築家)
7月8日(水)春風亭小朝さん(落語家)&篠原菊紀さん(脳科学者)
7月9日(木)峯岸みなみさん(アイドル・AKB48)&シソンヌ・じろうさん(お笑い芸人)

がご来店。一体どんな話が飛び出すのか……!? お楽しみに!


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<番組概要>
番組名:TOKYO SPEAKEASY
放送日時:毎週月-木曜 25:00~26:00
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/speakeasy/