ニホンイヌワシ繁殖確認 兆候見抜いた男性「時間の無駄と家族に笑われたが、かいがあった」

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観察時の様子を説明する県立人と自然の博物館の布野隆之研究員(左から2人目)と三谷康則さん(同3人目)=3日午後、神戸市中央区、兵庫県庁(撮影・山崎 竜)

 断崖絶壁のくぼみにある営巣地に向けたカメラの望遠レンズが生後3カ月のひなの姿を捉えた。兵庫県で16年ぶりの繁殖が確認された国の天然記念物ニホンイヌワシ。半世紀にわたり観察を続け、繁殖の兆候を見抜いた日本イヌワシ研究会の三谷康則さん(72)=姫路市夢前町=は、久しぶりのひな誕生に感極まった。

 「ほんの1秒見られただけでも感動する憧れの鳥。『時間の無駄』と家族に笑われたりもしたが、続けたかいがあった」。会見で三谷さんはこう明かし、笑みを浮かべた。

 年に50日ほどイヌワシの観察を続ける。一瞬を見逃さないよう、観察中は立ったまま。近年は生息数の減少から、10回に1度しか飛ぶ姿を拝めないこともあるという。

 5月上旬、つがいで行動するイヌワシを確認した。ヒナを育てている可能性があるとみて、観察を続けると、6月3日には、ひなの餌とみられるアオダイショウを運ぶ雌をカメラに収めた。

 「間違いない」。三谷さんは人と自然の博物館の布野隆之研究員(43)に急きょ連絡。同会員の今田吉孝さん(61)=養父市、観察家の伊藤浩士さん(52)=神戸市西区=も含めた4人で現地に向かった。

 営巣地を衛星利用測位システム(GPS)で確認し、今田さんが約5時間かけてルートを探索。三谷さんは近くで待機し、岩肌が露出する急斜面を3人が越えて巣に近づいたが、残り100メートルで沢が増水していたため断念。2度目は布野さんと伊藤さんで挑み、高さ約20メートルの崖のくぼみにある巣にひなの姿を確認。「やった、やった」。ハイタッチして喜んだという。

 三谷さんは「私が生きている間にはもう、ひなを確認できないだろうと思っていた。順調に育ち、またいつか日本のどこかで繁殖してほしい」と期待した。 (井上 駿)