ライバルは身内にあり? ベンツ「2代目GLA」が悩ませる10万円の差

ライバルひしめく、コンパクトSUVセグメントで健闘するメルセデス・ベンツのエントリーSUV「GLA」が、初めてのフルモデルチェンジで2代目へと進化しました。まず導入されたのはディーゼルエンジン搭載の「GLA200d 4MATIC」だけ。1グレードのみの展開ですが、さっそくチェックしてみました。


「SUVらしさ」を求めた

コンパクトSUVとは言いますがボディサイズは全長4410mm、全幅1834mm×全高1611mmで、それなりに大柄です。最近デビューして話題となっているトヨタ・ハリアーと比較して全長は短いものの、全幅や全高はほぼ同じようなサイズ感ですから、ミドルサイズと言っていいでしょう。

今回のフルモデルチェンジで、旧型よりサイズ面で大きな変更点と言えば、全高が100mm以上も高くなったことでしょう。日本の都市部での使い勝手を考えると、いわゆる「標準サイズ」という機械式駐車にも対応できた旧型のサイズ感ではなくなったわけです。大都市部などで気兼ねなく乗り回すのであれば、全高を1550mm、全幅を1850mm以内なら、一般的な機械式駐車場のサイズ枠に収まってくれるのですが……。

リアのボディも厚みが増してSUVとしての押し出し感がある

では今回、全高を高くして、よりSUVらしい佇まいとしたのはなぜでしょう。導入の際の解説には“よりオールラウンドに使えるSUV”とありました。つまり都会派だけではなく、SUVがもっとも得意とするアウトドアフィールドでの走りや使い勝手を向上させたことになります。

確かに2014年から日本に導入された初代GLAは、正直言ってハッチバックモデルのAクラスの車高を上げて、オフロード風味をトッピングした、という感じでした。駆動方式も4WD(4輪駆動)だけでなく、FF(前輪駆動)もラインナップされていました。全体のイメージはAクラスのクロスオーバーSUVですね。

ところが今回はボディに厚みを持たせ、ロードクリアランスも確保し、何よりも前後のオーバーハングを短めにしてオフロードでの走りにも十分に対応できるといった、SUVらしいデザインになっています。さらにフロントにはクローム仕上げのアンダーガードなども装備されていますから、SUVならではの力強さ、押し出し感が上手く演出されています。外観を見る限り、同じプラットフォームを使っているハッチバックのAクラスやBクラスとは確実に違った、SUVとしての存在感があります。

穏やかな加速とソフトな乗り心地

アイポイントが高くなり、見切りが良くなったシートポジション

ワイルド感を手に入れた外観をチェックしながら、ドライバーズシートに座りました。ここからの眺めはアイポイントの高さ以外はAクラスと大きく変わりません。特徴的な薄型のワイドスクリーンを横に二つ並べたダッシュボードはすっかり見慣れたデザインです。もちろんタービン型のエアコンの吹き出し口も変わらず装備され、対話型インフォテインメントシステムである“メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス(MBUX)”もしっかりとあります。

エンジンをスタートさせます。今回は2Lのディーゼルエンジンモデルのみの展開となります。最高出力150馬力、最大トルク320N・mというディーゼルターボです。アイドリング時のエンジン音も気になることはなく、住宅街でも許容範囲でしょう。走り出すとその操作感覚はAクラスと同じ、と思いきや、やはりアイポイントが高くなったことによる見切りの良さの向上は十分に感じ取ることができます。そのためボディが小さく感じるので、混雑した市街地走行でもストレスはかなり減ります。

急激なトルク上昇もなく、とても自然でソフトで使いやすいディーゼルエンジン

さらに印象深かったのはアクセルを踏み込んだ初期のフィーリングです。いきなりトルクがガツン立ち上がるタイプではなく、ソフトにトルクが出てくる感じで、アクセルの踏み込み量に応じて、とても穏やかに加速していくのです。そのスムーズで穏やかな加速は8速のデュアルクラッチ式ATによるところもあります。

そしてサスペンションはストローク感をしっかりと感じるセッティングで、当たりも乗り心地もソフト。残念ながら今回のテストではオフロードを走る機会はなく、4WDの走りも含めて試すことはできませんでした。ただ、この安心感のある穏やかな乗り心地は最低地上高200mmを確保した4WDだから実現できたものでしょう。この点において確実に旧型を超えていますし、オフロードでのパフォーマンスもかなり高くなっていることは容易に想像が付きます。

身近に潜むライバルとは

SUV感を増した外観、その上で走り、操作感がソフトで、使い勝手も向上した2代目GLA。メルセデス・ベンツが言うように、SUVとして、よりオールラウンドな性能を向上させてきたわけですが、その価格はノーマルで502万円となっています。実はこの価格に少々、悩みの種が潜んでいます。

このGLAの登場と時を同じくして新型GLBが日本に導入されたのです。GLA以上にSUV感を増した佇まいは、フロントマスクの押し出し感もさらに高いのですが、なによりホイールベースが2829mmと、GLAの2729mmより長く設定されています。ロングホイールベースならではのゆったりとした乗り心地と、居住空間の拡大により乗員は快適にくつろげます。さらにGLAが2列5人乗りに対して、GLBは少し狭いですが3列目が装備されていて、7人乗車となります。

GLBはフロントの押し出し感もより強く、ロングボディで伸びやかさもある(写真はGLB250)

これでGLBの車両価格が50万円以上高額ならばそれほど迷いはないかもしれませんが、同じディーゼルエンジンを搭載したGLB200dの価格が10万円アップの512万円で、おまけに7人乗車。こちらは4WDモデルではありませんが、「2WDモデルでもまったく構わない」という人にとっては十分ですし、乗車人数7人という使い勝手も含めて魅力的であり、迷いどころかもしれません。

ちなみにGLBの4WDモデルが欲しいということであれば2.5Lのガソリンエンジンモデルが696万円が用意されています。こちらはスポーツモデルですし、200万円近く違うためGLAとは迷うことがないと思います。

今後、GLAのラインナップが充実すれば、割り切りも付けやすくなるのでしょうが、現状はこの10万円の差による小さな葛藤が繰り広げられるかもしれません。案外身近にライバルが潜んでいたようです。

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