社会的弱者の小さな声

 「社会的弱者」とは障害者や高齢者など、生活上の利便を図りづらく、不利益を被りやすい人たちを指す。コロナ禍の今、あらゆる面で弱者の声は小さく、どうしても社会に届きにくい▲10月に鹿児島県で開催予定だった全国障害者スポーツ大会(障スポ)が見送られた。障スポは国体後に同じ場所で開かれる大会。本県も6年前、長崎がんばらんば大会と称して行われた▲この決定について、当然のように現場の選手や指導者の声は届かなかった。確かに障害者の大会開催は難しいが、主催者側に現場の声を聞く姿勢は見えなかった▲実は障スポの見送りは2年連続。昨年の茨城大会は台風で開幕2日前に中止となった。県選手団がそれを知ったのは羽田へ向かう空の上。県障害者スポーツ協会の亀田信樹事務局次長は「選手たちにとっては生きがいとも言える大会。とにかく残念だった」と当時を振り返る▲とんぼ返りを強いられたその日。一人一人の名札を回収していたところ、10代の選手が駄々をこねた。「僕は来年も出るから返さない」と。その決意通りに、彼は今年も代表権を手にしていた▲彼らが思いきり躍動できる日はいつになるのか。一日でも早くと願うと同時に、首都圏で再び感染者が増えだした現状を憂う。都会の「夜の街」は盛況らしい。(城)

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