思い出の地で撮影! ビンテージバスで駆け回る『移動写真館』 子どもの成長、プロポーズ、生活再建… 特別な一枚 

特集は、リクエストに応じて様々な場所へ撮影に出かける写真家です。自慢のビンテージカーに機材を積んで、長野県内外を駆け巡る活動は、さながら「移動写真館」。依頼者の思い出の場所で、特別な一枚を撮影しています。

「お姉ちゃん立たないでいいよー、ゆっくりねー」

青空の下、宮田村の公園で遊ぶ3姉妹。その様子を撮影しているのは、駒ケ根市の写真家・下宮伸一さんです。

写真家・下宮伸一さん:

「子どもって、外が一番表情がいい。スタジオとか中の暗いところよりも、外に行くと、ごろっと変わるので」

この日は、双子の女の子の2歳の誕生日。「3人の成長の様子を写真におさめたい」との依頼を受けての撮影です。

長女・きほちゃん(4):

「たのしかった」

母・優帆さん:

「成長を振り返るときに、ちゃんとしたプロに撮ってもらったものがほしいなと。今年は七五三とかイベントもない年だったので、笑顔もたくさん撮れたし満足です、すごく」

下宮さんは、希望の場所で撮影する「ロケーションフォト」を手掛けています。

「相棒」と言えるのが、このビンテージバスです。

写真家・下宮伸一さん:

「これは1965年の本当のビンテージバスで、フォルクスワーゲンの『タイプ2』というバス」

駒ケ根市にスタジオも構えていますが、これに機材を積んで県内外を駆け回っています。

写真家・下宮伸一さん:

「お客さんの思い出はスタジオにはない、お客さんの思い出はその場で撮るから本当の思い出なんだというコンセプト。思い出を大切にしたかったので、スタジオじゃないなと。これからの時代はお客さんの思い出に、私たちがいかに合わせていくか」

この日、まず向かったのは依頼者の自宅です。竹村悠斗さん、真由子さんは先月、入籍したばかり。「ブライダルフォト」の2回目の撮影です。

写真家・下宮伸一さん:

「はーい、お疲れさまです。お待たせしました」

メインの撮影場所は、駒ケ根高原のキャンプ場。ここは撮影に欠かせない、2人の思い出の場所でした。

新郎・竹村悠斗さん:

「僕の仕事先、職場でもあるし、一番はプロポーズをした2人の思い出の場所でもあるので、そういったところで記念を残したいと」

悠斗さんはリゾート会社の社員で、キャンプ場の管理などをしています。今年3月、ここで真由子さんにプロポーズしました。

幸せな2人ですが、新型コロナの影響で、まだ式は挙げておらず、予定も立てられずにいます。

新郎・竹村悠斗さん:

「(結婚式は)本当は年内にと入籍してすぐに思ったけど、この形で一つの記録を残して、結婚式は来年以降、コロナが収束してみんなが幸せを感じてもらえる時期に考えている」

新婦・真由子さん:

「結婚式を挙げた感じでよかった。素敵な思い出になりました」

新郎・竹村悠斗さん:

「最高。(写真の)出来上がりが楽しみ」

写真家・下宮伸一さん:

「2人に寄り添って結婚式ができたかな、写真の中で結婚式ができたかなと」

スタジオを飛び出し、ストーリーのある写真を。下宮さんのこだわりには、自身の経歴や体験が影響しています。

下宮さんの前の職業はプロスキーヤー。専門誌の表紙を飾ったこともあります。良い写真を残そうと自分もカメラを手にし、やがてスキーなどのスポーツ写真を手掛けるようになりました。

写真家・下宮伸一さん:

「スポーツ写真を撮る中でも、(結果を出すまでの)ストーリーが素晴らしいなと思っていた。ストーリーを大切にしたい、そんなフォトグラファーになりたいと思って。スポーツだけじゃなくて、人それぞれ人生、生き様がある。そのストーリーを撮っていこうと思って今に至る」

2008年から駒ケ根市を拠点に活動を始め、写真の国際コンテストで入賞を果たすなど実績を積んできました。

28日、下宮さんは長野市豊野の矢島亘さんの家へ。真新しいキッチンでホットケーキを作る、小学生の兄弟の姿などを撮影していきます。依頼された撮影は、新たな生活の第一歩を踏み出した家族の風景です。

矢島亘さん:

「そこの、一番最後の瓦(まで水につかった)。わざと残しておいた」

矢島さんの家は去年10月の台風災害で、床上2メートル45センチまで水に浸かりました。下宮さんが手掛けた兄弟の七五三のアルバムも、濡れて台無しになってしまいました。

矢島亘さん:

「子どものアルバムが1階にあったので水没してしまって、生活用品から家財から自宅含め、全て水につかってしまって絶望的な感じはした」

被災後、相談を受けた下宮さんは、データが残っていたことから無償でアルバムを作り直し、プレゼントしたそうです。

矢島亘さん:

「力になれることがあればと直していただいて」

写真家・下宮伸一さん:

「思い出なので、やっぱり」

先月、リフォームが終わり、身を寄せていた実家から移って新たな生活をスタートさせました。ここで再び、思い出を重ねていきます。

長男・大輝くん:

「楽しかった」

妻・真由子さん:

「本当に絶望的だったところから戻れて、新たなスタートを切るときに、下宮さんに撮っていただいたのはありがたいこと。これをきっかけに元気に前向きに過ごせたら」

今はスマートフォンやデジタルカメラで、誰もが手軽に高画質の写真が撮影できる時代。

でも、思い出の場所や人生の節目、そして何気ない日常も、プロの目を通した写真は格別のものになると下宮さんは話します。

写真家・下宮伸一さん:

「スマホで撮っている写真はメモ帳にしかなっていない。わざわざフォトグラファー呼んでお金を出して撮る価値観が、すごく思い出で大切になってくるのではないか。(新型コロナで)こういう時代になって自宅にいる人が増えて、身近なものが一番いいと感じるし、身近にいる人たちが一番大切なんだと感じられていると思う。そのときにロケーションフォトが来てくれるこの場所が、すごく大切なんだと改めて見直されている」

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