新型コロナの非公開会議 長崎県、議事録作成せず 識者「検証や教訓のため必要」

新型コロナ対策を議論する県の本部会議。原則非公開で冒頭だけを報道陣に公開している=県庁

 長崎県は、新型コロナウイルス感染症対策で休校や休業協力要請などを決定した県の本部会議をこれまでに非公開で計13回開いているが、いずれも議事録を作成していない。九州各県でも対応は分かれるが、識者はかつてない事態への対応を検証し教訓を得るためにも議事録作成が必要と指摘している。
 政府は3月、新型コロナ問題を行政文書管理ガイドラインに基づく「歴史的緊急事態」に指定。国の行政機関については、政策決定や了解をする会議で発言者を含めた議事録の作成が義務付けられたが、自治体の会議は「努力義務」にとどまる。
 新型コロナウイルス特別措置法(特措法)は都道府県知事に強い権限を与え、緊急事態宣言下では外出自粛や休業要請など私権制限を伴う施策も決定できる。本県も中村法道知事を本部長に副知事や部局長らでつくる対策本部会議を設置し、休校、県境をまたぐ移動の自粛、休業などを県民や事業者に求めた。
 県総務文書課によると、庁内会議の議事録の作成基準はなく、各部署の判断に委ねられている。特措法に基づく県行動計画では「対策の実施に関する記録を作成、保存し、公表する」と規定。この「記録」について県の担当者は「要点が分かる資料が必要と判断した」と説明する。県は議論の内容や決定事項などをまとめた「議事概要」は作成しているが、議論の詳細なやりとりや発言者を記した議事録はない。ただ音声データは保存しており、担当者は「検証などで必要になった時に聞き直すことはできる」としている。
 本県を除く九州・沖縄7県のうち、議事録を作成しているのは福岡、佐賀、宮崎、鹿児島の4県。会議を公開しているのは福岡、佐賀、熊本、宮崎の4県。本県のように議事録がなく、会議も非公開にしているのは大分と沖縄の2県。大分県の担当者は「忌憚(きたん)のない意見を出してもらうため」と理由を説明する。一方、沖縄県は6月、玉城デニー知事が庁内会議の議事録作成の基準を策定する考えを示した。
 市民の知る権利の保障を求めて活動するNPO法人情報公開クリアリングハウス(東京)の三木由希子理事長は「市民や事業者に大きな負担を求める対策を決めた会議で、発言者や発言内容の具体的な記録を作らないのは論外」と指摘。「公文書は市民の財産。教訓を得るためにも、検証に足るだけの記録を残すべきだ」と話した。

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