【東京都知事選2020】北区都議補選リポート:前代未聞の“女性候補五つどもえ”!国政レベルの白熱バトル!

東京都知事選挙と同日投開票で行われる東京都議会議員の補欠選挙。その4つの選挙区のうち、とりわけ注目を集めているのが、5人の候補者全員が女性の新人となった北区選挙区です。昨春の北区長選挙へ立候補した音喜多駿氏(現参議院議員)の辞職にともなう欠員補充ですが、この選挙戦を取材してみると、都議選の枠を超えて国政選挙並みに大掛かりで激しいバトルが繰り広げられていました。

因縁の代理戦争?!自民vs.都民ファースト

今回の都知事選で自民党は独自候補の擁立を見送りましたが、北区補選では元北区議のやまだ加奈子候補を公認しています。

4期13年務めた地元区議経験をもとに即戦力をアピールするやまだ候補。北区の自主財源比率が23区平均より低い財政構造のなかで、北区と都、そして国との連携が重要課題であり、その態勢を構築することで住民の安全安心を守っていきたいと訴えています。

前回2017年の都議選で小池百合子都知事と対立した都議会自民党の高木けい幹事長(当時・現衆議院議員)が落選し、北区は自民都議不在の状態。議席復活をかけた戦いということで、西村康稔新型コロナ対策担当大臣や河野太郎防衛大臣が応援に入るなど、国政レベルの選挙戦を展開しています。

一方、その自民党を圧倒した都民ファーストの会が今回擁立したのは、小池知事の元秘書・天風いぶき候補です。

宝塚歌劇団で宙組男役として11年在団後、父親と同じ政治家秘書という道を選び、小池百合子事務所(当時衆議院議員)へ入所したというユニークな経歴。都民ファーストの会の創設にも関わっており、まさに“小池直系”候補といえます。

その天風候補は、現在祖母の介護をしている実体験から、介護人材への支援をはじめとする介護・医療体制の強化を強く訴えています。また、音喜多氏離党後、北区から都民ファースト都議が抜けてしまったことから「北区に最大会派の都議を」という点も演説の中で強調していました。

この自民党と都民ファーストの双方と友好関係にあるのが、公明党です。国政では安倍政権を支えつつ都政でも知事与党であり、今回の知事選でも小池氏の「実質的支援」を表明しています。前回の都議選でも同党は都民ファースト候補との相互推薦を行っています。

しかし今回、都議補選の告示間際になって同党は自民候補の推薦を決定しました。都内で唯一公明党の小選挙区選出代議士を送り出しているのが、北区全域を含む東京12区。次期総選挙で同区から勇退する太田昭宏元代表の後任として岡本三成衆議院議員(比例北関東)の鞍替え出馬を同党は決定しています。いわば自公連立の象徴ともいえる選挙区です。

一方、公明党結党の原点は都議会での躍進にあり、東京は支持母体・創価学会発祥の地でもあります。その東京都のトップと連携することも同党にとって極めて重要で、「知事は小池氏、補選は自民」という、双方に配慮した方向性を最終的に決めたものとみられます。

知事選との連動をはかる立憲、維新

立憲民主党公認の斉藤りえ候補は、かつて“筆談ホステス”としてメディアでも取り上げられ、その知名度を活かして2015北区議選ではトップ当選を果たしています。

区議1期を務めた後は、前回参院選に立憲民主党の比例候補として出馬するも落選。
今回、再び同党からのチャレンジとなります。
その斉藤氏は「誰ひとり取り残さない東京をつくる」という考え方を大きく掲げています。
選挙ドットコムの取材に対し、「耳が聞こえない私だからこそ、声なき声、声をあげたくてもあげられない小さな声にじっくりと耳を傾けて思いを丁寧に拾い上げることが出来ると確信している」とその思いを語りました。

都知事選で同党は共産党など他の野党とともに宇都宮けんじ氏を支援しており、北区補選でも共産党区議らが加わり、知事選と連動した選挙活動を繰り広げています。

同じように都知事選で小野たいすけ候補を推薦する日本維新の会。同党に現在音喜多氏が所属することから、“音喜多駿の後継者”と位置づけて、同氏の政策スタッフを務めた佐藤こと候補を擁立しました。

自身も「保活」経験者の佐藤候補。ベビーシッターの助成を改善するなど待機児童問題の解決に取り組みたいと意欲をみせています。また、障害者の就労支援に携わる業務経験を活かして、障害者や、家族を介護する人たちが働きやすい社会を実現していきたいと訴えています。

選挙ポスターには、小野候補と同様、維新副代表の吉村洋文大阪府知事の顔写真を掲げるほか、「身を切る改革」という維新のスローガンも織り込みながら、都知事選と一体化したキャンペーンを展開していました。

ポスターが物議!ホリエモン新党

前述の4氏による選挙戦とみられていたところ、告示2日前に出馬会見を開いたのが、ホリエモン新党公認のしんどうかな候補です。
“アベノマスク”2枚をブラジャーに見立ててその姿をプリントしたポスターが物議をかもしています。

「アベノマスク・ブラ」の選挙ポスターに賛否両論!しんどうかな候補に真意を聞いてみました

しんどう候補はその意図を「体を張った政権批判、皮肉だ」と語っています。

ポスターが注目されていますが、政策面ではどういった考えを持っているのでしょうか。
しんどう候補は選挙ドットコムの取材に対し、「インターネットの活用、ITの活用が政策の主軸だ」と語りました。WEBマーケターである同氏は、北区民のニーズや意向を、Googleトレンドやキーワードプランナーを使いながら定量的かつ正確に把握していきたいと、自身の構想を推し進めたい考えです。

鍵を握る?「投票用紙の1枚目」

それぞれバックグラウンドの異なる5候補ですが、本人の政策や魅力に加えて今回得票を左右する要素が都知事選の行方です。
今回北区の投票所では投票用紙が2枚渡されます。まず1枚目を渡された有権者は、都知事選の候補者を書いて投票し、そのあとに2枚目=都議補選の投票に臨みます。

都知事選について各マスコミは、小池氏が他候補を引き離し優勢だという情勢調査結果を伝えています。最終的な結果は分かりませんが、1枚目に小池氏の名前を書く北区民が少なからずいるものとみられます。

となると、本来であれば小池氏元秘書の天風候補にとっては流れを作りやすい状況ですが、投票日までにどこまで新人である同氏の名前と小池氏とのコンビが有権者に浸透するかが鍵となってきます。

また、情勢調査によると自民支持層の7割が小池氏を支持していることから(共同通信)、1枚目は小池氏だが2枚目は地元で知名度のあるやまだ氏へ、という棲み分けがどこまでみられるかもポイントです。

斉藤、佐藤、しんどうの3候補についても、連動する都知事候補(宇都宮氏、小野氏、立花氏ら)の支持者により多く投票所へ足を運んでもらえれば、得票の積み上げが期待できます。

どの候補が当選しても女性都議の誕生となる北区の都議補選。投票日は、7月5日です。

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