【新型コロナ】マスク不足を乗り切った消防署 カギは地域連携

マスクの滅菌処理に使った機械を囲む飯田消防署長(左)と大西院長=川崎市中原区

 中原消防署(川崎市中原区)が地元の歯科医院に協力を仰ぎ、深刻だったマスク不足を何とか乗り切った。新型コロナウイルスの感染が拡大していた4、5月を中心に、感染リスクの高い救急隊員を優先するため、リスクの低い内勤の職員らが同院で滅菌した使用済みの不織布マスクを再利用。マスクが底を突く不安もなく、追加供給された6月を迎えることができたという。飯田康行消防署長は「地域連携の大切さを思い知った」と同院に感謝している。

 同消防署は当初、約8千枚を保有。消防署員150人が使用すると、2カ月足らずで足りなくなる計算だった。飯田消防署長は救急隊員らのマスクを最優先に確保するため、20年来の付き合いという大西歯科医院(同区)の大西義和院長に相談。「困っている人の役に立てるなら」と快諾してもらった。

 医療器具を滅菌するための機械を活用し、回収した使用済みマスクを110~120度の高温で20分ほど熱して滅菌処理をし、再利用した。消防署員がほぼ毎日、マスクを同院に持ち込んだ。

 ただ新品よりも品質が落ちる可能性があるため、感染リスクが比較的低い事務職員らが使用。およそ450枚の節約につながり、感染症と最前線で戦う救急隊員に新品を潤沢に供給できた。飯田消防署長は「マスクがなくなってしまうという不安もなく職務を遂行できたのは大きかった」と振り返る。6月に約8千枚のマスクが追加供給されたため、滅菌処理を休止した。

 同院は中原警察署の使用済みマスクも滅菌処理をしたといい、大西院長が「滅菌用の機械はどの医療機関にもある。他の地域でも連携が広がってほしい」と言えば、飯田消防署長は「こんな時期に地域で一丸になれたのは有意義。今後も知恵を出し合って協力していけたら」と力を込めた。

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