残業代減&住宅補助減で苦しい51歳管理職「家を買いたいが老後資金が心配」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、51歳会社員の男性。管理職に昇進し、残業代と住宅補助がなくなって家計が厳しくなったけれど、子どもが小学生のうちに家を購入したいそうですが…。FPの高山一惠氏がお答えします。

管理職となり残業と住宅補助もなくなったため月の収入が20万以上落ちました。それまでにためた貯金が3000万程度ありますが、現在は収支がとんとんです。単身赴任のため食費含めいろいろとお金がかかっています。

こういった状況ですが、戸建て住宅の購入を考えています。子どもが小学生のうちに自宅を構えたいと考えていますが、働いてもあと15年程度ということもあり、老後の蓄え等考えても住宅購入が妥当かどうか悩んでいます。住宅購入想定金額は3500万円です。

【相談者プロフィール】

・男性、51歳、既婚(妻:46歳、専業主婦)

・職業:会社員

・子ども:1人(10歳)

・住居の形態:賃貸

・毎月の世帯の手取り金額:42万

・年間の世帯の手取りボーナス額:150万円

・毎月の世帯の支出の目安:42万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:10万円

・食費:9万円(家族で6万、私3万)

・水道光熱費:2.5万円

・教育費:2.5万円(英会話、ピアノ、通信教材)

・保険料:4.5万円(私2万、妻1.5万、個人年金1万)

・通信費:2.5万円

・車両費:7.5万円(駐車場、車検、駐車代、修理代含む2台分)

・お小遣い:特に決めていない

・その他:3.5万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:0

・ボーナスからの年間貯蓄額:150万円

・現在の貯蓄総額:3200万円

・現在の投資総額:0

・現在の負債総額:なし


高山: ご質問ありがとうございます。50代は、老後資金の準備も意識しなくてはならない世代ですので、家を購入するとなると、老後の資金についても慎重に検討する必要があります。加えて、ご相談者さんの場合、お子さんが10歳ということもあり、教育資金についても考えておく必要がありますね。今回はいただいた情報から家の購入が無理なくできるかどうかを考えてみたいと思います。

老後資金をいくら貯めるのか把握する

50代で家を購入する場合、必要な老後資金をしっかり把握して、その上で住宅購入の資金計画を立てる必要があります。

そもそも老後資金はどれくらい必要なのでしょうか? 昨年6月に老後2000万円問題が世間を騒がせましたが、その時に国が提示したデータを参考に老後どれくらいの金額が必要なのかを見てみましょう。

「2000万円」という不足額の根拠となったのは、総務省が出している家計調査報告(2017年)。このデータによると、現在60歳以上の夫婦(夫65歳以上、妻60歳以上)の高齢無職世帯では、1カ月の平均収入は年金を中心に約20万9000円、支出は約26万4000円。公的年金だけでは、毎月5万5000円の赤字となります。最近の統計から日本人の4人に1人は95歳まで生きるとのこと。ですから、年金支給開始年齢である65歳から30年生きると仮定すると、5万5000円×12カ月×30年=約2000万円足りなくなるというわけです。

ちなみに、2019年の家計調査報告では、60歳以上の夫婦(夫60歳以上、妻65歳以上)の高齢無職世帯では、1カ月の平均収入は年金を中心に約23万8000円、支出は約27万1000円。公的年金だけでは、毎月3万3000円の赤字となっています。

2000万円に住居費や医療費は含まれていない!

そして、この2000万円という数字は、衣食住の基本生活を送る上で必要なお金で、かつ、持ち家を前提としています。さらに、高齢になると、病気やケガなどで入院したり介護になったりするケースが増えます。ですから、プラスで500〜1000万円程度は準備したいところです。つまり、老後資金として準備しておきたい金額の目安としては、2500〜3000万円程度となります。

50代で家を買うなら押さえたいこと

家を購入したとしても、上記の老後資金を準備できるかどうかですが、ひとまず、家を購入する前提で返済計画を考えていきます。

50代で家を購入するとなると、長い期間のローンは組めないということもありますが、少なくとも定年退職を迎える65歳までにはローンを返済したいところです。

現在家計の収支状況はトントン。家賃は10万円とのことですから、10万円以上のローンを組んでしまうと途端に家計は厳しくなります。

気をつけなければならないのは、毎月の返済額が今の家賃と同額になるような住宅ローンを組んでしまうこと。なぜなら、家を購入すると維持費がかかるからです。一戸建てなので、マンションと違い、管理費・修繕積立金はかかりませんが、一戸建ての場合には、マンションの敷地権の評価に比べて、土地による評価部分が大きいので、その分だけ固定資産税などの負担が重くなる可能性があります。

不具合が発生したときの修繕費もかかりますので、この費用も見込んでおく必要があります。ざっくりですが、維持費のコストとして月割りにして2万円〜3万円程度上乗せすると、毎月の返済額は7万円から8万円に抑えたいところです。

ただし、相談者さんは、現在車を所有しており、駐車場代がかかっています。一戸建てを購入することで駐車場代の負担が減るケースが多いので、その分を考慮すると、現在と同じ家賃程度のローン返済でも許容範囲といるでしょう。

無理のない資金計画は?

では、資金計画ですが、購入希望物件価格が3500万円程度とのこと。仮に頭金を1500万円として、2000万円のローンを65歳までの14年間、金利1%で借りる場合を見てみましょう。そうすると、毎月の返済額は、約12万7000円となります。これでは家計が圧迫されますね。

では、頭金を2000万円として、1500万円のローンを65歳までの14年間、金利1%で借りる場合を見てみましょう。そうすると、毎月の返済額は、約9万5000円となります。こちらは、許容範囲といえるでしょう。ちなみに、今後は、しばらく経済状況が不安定な時期が続くと思いますので、ボーナス併用払いはおすすめしません。

この他諸費用として、通常、新築物件の場合は物件価格の5%程度、中古物件なら10%程度がかかります。

つまり、住宅を購入する費用として、頭金2000万円と諸費用200〜300万円程度を現在の貯蓄から拠出すると、貯蓄の残高は1000万円程度になります。

今後、今回のコロナのように世界経済を揺るがすような危機が襲ってきたり、自分自身が病気になって働けなくなったりといったリスクを考えると、1000万円程度、手元に残しておくと安心ですね。

ボーナスを貯められれば見通しは明るい

先ほど、老後資金として、65歳までに3000万円程度を見積もりましたが、住宅資金で2500万円程度使ってしまうとなると、残りの14年間で2000万円程度貯める必要があります。加えて、お子さんの教育資金も考えなければなりません。

現在は単身赴任とのことなので、生活費が余計にかかると思いますが、幸いなことに年間の手取りボーナスが150万円あり、その金額を全て貯蓄できているので、このペースは保ちたいところです。60歳を過ぎて再雇用になると、給与形態が変わる可能性が高いので、60歳までの9年間は、ボーナスをしっかりと貯めていきましょう。

仮に今の給与が60歳まで続き年間150万円を9年間貯めることができれば、1350万円貯まります。退職金の状況が把握できていないのでなんともいえませんが、退職金が1000万円から1500万円程度出るなら老後資金は確保できそうですね。

もし、ボーナスが減額されたり、支給されなかったりといった事態が起きると、現在の家計からでは、貯蓄が難しいので、物件価格を下げる、購入しないなど、プランを練り直す必要がありますね。

計画的な貯蓄と妻の収入アップの検討を!

また、奥様も今は働けない事情があるかもしれませんが、働くことも検討してみると良いのではないでしょうか。お子さんの教育プランがわからないのでなんともいえませんが、特に私立を希望せず、公立の学校を希望するのであれば、毎月の家計費から3〜4万円を捻出できれば大丈夫でしょう。大学だけ私立というパターンも多いですが、私立大学に行く場合には、18歳までに300〜500万円は準備したいところです。

仮に毎月奥様が5万円程度の収入あれば、奥様の収入でお子さんの教育費をカバーできますし、10万円程度の収入があれば、さらに、収入の一部でつみたてNISAなどの運用にチャレンジすることで家計に余裕が生まれます。

奥様は現在46歳とのことですが、仮にお子さんが中学生になる13歳から働き出したとしてもまだ49歳です。仮に49歳から65歳まで毎月3万円を3%の投資商品で運用した場合には、積立元本576万円に対して、約738万円になります。十分、老後資金などに役立つ金額です。

今回のご相談者さんは、まとまった貯蓄があったことが住宅購入の可能性を高めたと思います。また、奥様が働いたり、運用を一部取り入られたりすることで、家計の余力が生まれる可能性もあります。

とはいえ、詳細な事情がわからない部分もあり、アドバイスの前提が崩れた場合には、物件価格を下げたり、奥様がもっと早い時期から働いたりといった調整が必要になるでしょう。今回は、一般的なアドバイスになっているところもありますが、参考にしていただけたら嬉しいです。

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