【高校野球】平成最初と最後の優勝から令和時代の指導へ 山田新監督が感じた東邦野球の変化

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東邦・山田祐輔新監督【写真:荒川祐史】

コロナ禍での監督就任、新監督を支えた選手の振舞い

昨春選抜で現中日・石川昂弥を擁し全国制覇、昨秋神宮王者の中京大中京とともに私学4強の一角として愛知の野球を牽引する東邦。4日には夏の甲子園中止を受け、代替試合となる夏季愛知県高校野球大会が開幕し、東海との初戦を11-0の5回コールドで勝利した。

森田前監督に代わってこの春就任した山田祐輔新監督は、前例のないコロナ禍での船出に「どう声をかければいいか…立場によっても言うことは変わる。全然わからないなかでのスタートでした」と率直な思いを語る。

29歳の青年監督を支えたのは、森田前監督が最後に残した教え子たち。「自粛明けのミーティングではむしろ選手のほうが大人で、心の中まではわかりませんが前向きな表情や振舞いをしていた。自粛前と比べて体が大きくなっていたりスイングも鋭くなっていたり、プレーできないなかで野球に対する気持ちが強くなった部分もあるんでしょう。そういうハングリーさを持てたのはプラスになったのかな」と前向きな気持ちをもらったという。

指導する東邦・山田祐輔新監督【写真:荒川祐史】

平成最初と最後の甲子園優勝、前監督の“変貌”に見る時代に合った指導法

一般企業を経て2016年にコーチとして東邦に復帰。現役時代から8年ぶりに帰ってきた母校のグラウンドでは、前監督の“変貌”ぶりに驚かされることも多かった。「私の頃はめちゃめちゃ厳しかったので。監督の言葉には『ハイ!』と返事するくらいで、グラウンドでは会話らしい会話をした記憶がなかった。久しぶりに帰ってきたら厳しいなかでも雰囲気がずっと良くて、選手がのびのびやってるなと。監督に対してもフレンドリーというか、親しみやすさが増していて、逆に『こんなに楽しそうにやっていて大丈夫なのか?』とも感じました」

指揮官の変わりように当初は戸惑いもあったが、コーチとして経験を積むうちにその真意にも気づいたという。「監督に直接聞いたわけではないですが、時代の変化、子どもたちの変化に柔軟に対応していたのかなと。私の頃よりも性格のいい子、信頼できる選手が増えてきた(笑い)。その最たる例が(現中日の)藤嶋ですかね。最後の1年しか指導していませんが、圧倒的な実力を持ちながら細部まで気が回り、ムードメーカーでありながら謙虚にもなれる。こんな選手がいるんだと思いました」

目指す野球は“森田イズム”の継承とその先鋭化だ。「年齢的にアプローチの仕方も違う。より多くコミュニケーションを取ってやっていくことかなと。私のときは控え選手がレギュラーに対して強く言える環境があった。だから強かったとも思うし、控えの子のモチベーションも上げながら、どうやったらチーム全体のレベルが上がるかを考えてやっていきたい」。ときに選手の恋愛相談にも乗るなど、グラウンド内外で密なコミュニケーションを図り、勢いや爆発力のある東邦野球を引き継いでいくつもりだ。

16年間の監督歴で春夏通算7度の甲子園出場、昨春には同校5度目の選抜優勝を飾った前監督の後任にプレッシャーはないのか。「代替大会は無観客で、甲子園もない。それでも背番号を背負った最後の大会というのは変わらない。プレッシャーは始まってみないとわかりませんが、勝ちにこだわってやっていきたい」。時代に合わせた指導法で、平成最初と最後の甲子園で優勝校となった東邦。前例のないなかでの初舞台にも気負うことなく、青年監督が令和時代の東邦野球を築いていく。(佐藤佑輔 / Yusuke Sato)