肥前

 江戸時代、天領だった長崎の港は佐賀藩と福岡藩が交代で警備していた。長崎と佐賀は同じ肥前の国で、港に面する地域である深堀は佐賀藩の飛び地でもあった▲佐賀藩は、長崎を通して海外から最新の情報や技術を取り入れ、幕末期の軍事力は薩摩や長州以上だったともいわれている。長崎は警備を任せ、佐賀はそれを藩の強化に役立てる。今で言うウィンウィン(相互利益)の関係ともいえる▲現在はというと、隣の県でありながら、なにかと意見が対立する場面が目立つ。諫早湾干拓の開門問題しかり。新幹線長崎ルートの整備方式をめぐっては膠着(こうちゃく)状態が続いている▲先月、両県自治体の協力が実る出来事があった。長崎、佐賀、福岡3県の8市が申請していた「砂糖文化を広めた長崎街道~シュガーロード~」が日本遺産に認定された▲8市のうち長崎、佐賀両県の長崎、諫早、大村、嬉野、小城、佐賀の各市をたどっていくと、ついつい新幹線長崎ルートと重ね合わせてしまう。小城を除く5市には新幹線の駅が予定されているからだ▲シュガーロードは実に5回目の申請でやっと認定された。当然関係市が協力し続けたからこその結果。新幹線整備にも長崎、佐賀両県の協力は欠かせない。ウィンウィンの関係になれるような方策は必ず見つかるはずだ。(豊)

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