ふるさと探訪

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■447回 自然のあるべき姿―羊蹄山の「外来種」コマクサ―
北海道南西地域で最も標高の高い独立峰、羊蹄山(1,898メートル)は、その美しさもさることながら、生き物たちの宝庫でもあります。全域が国立公園に指定されている他、字比羅夫の登山道周辺に広がる植物群落は、国の天然記念物に指定されています。平成18年、自然公園法に「国立公園内の特別保護地区内で動植物を放すことを禁じる」法律が追加されました。実はこの改正に、羊蹄山で起きた、ある出来事が深く関わっていました。

それが平成10年、羊蹄山山頂付近で生育が確認されたコマクサです。調べにより、人為的にまかれた種に由来することが判明。高山植物の女王と呼ばれ、元々は大雪山系、阿寒山系などに生育し、高山の環境厳しい砂礫地(されきち)で優雅に咲く姿は、山を歩く人々の疲れを和らげてくれます。しかし、たとえ善意でも、本来いないはずの生き物を持ち込めば「外来種」であり、自然のあるべき姿を曇らせてしまうでしょう。

「生物多様性」という言葉がありますが、生き物の種類が多ければ何でもよい、というわけではありません。自然は気象、火山活動、地質、植物、昆虫、動物、菌類…などが長い年月をかけて複雑に絡み合った、絶妙な相互作用の上に成り立っています。「羊蹄山にコマクサが無い」というのも、自然の摂理の産物なのです。

文:小田桐亮(倶知安風土館学芸員)
※2011年から羊蹄山の植生を本来のものに近づけるべく、風土館とニセコ羊蹄山岳会(地域の自然ガイドの方々からなる会)が共催でコマクサ駆除の作業を行っています