なぜ獅子のサブマリンはまだ未勝利なのか? 専門家が語る勝てない投手の“あるある”と課題

5日のオリックス戦に先発した西武・與座海人【写真:荒川祐史】

野口寿浩氏が指摘する與座のポイント「あの1アウトが取れていたら…」

西武は5日、本拠地のメットライフドームでのオリックス戦に5-8で敗れた。カード負け越しを喫し、勝率5割に逆戻り。今季3試合目の登板となった先発の與座海人投手は、6回途中3失点で今季2敗目となった。開幕から大崩れしていない「サブマリン」だが、なかなかプロ初勝利には手が届いていない。

「あの1アウトが取れていたら、試合展開も変わっていたかもしれませんね」

ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、2018年までヤクルトで2年間、バッテリコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏が振り返ったのは、オリックス1点リードで迎えた6回2死一塁の場面。與座は、打率1割台の8番・後藤駿太外野手に高めの直球を左前に弾き返され、一、二塁とピンチを拡大。そこで降板が告げられ、田村伊知郎投手が2番手として登板した。その直後にタイムリーを許してビハインドは2点に。さらに、イニングをまたいだ田村は7回に5連打を許して4失点。接戦の展開が一転、敗色ムードを濃くした。

「與座が後藤を抑えていれば、7回からの継投も変わったかもしれない。そのまま田村がいったとしても、イニングの頭からいけたわけですから」と野口氏は言う。たとえ、與座はリードを許した状況で降板したとしても、7回のビッグイニングは防げたかもしれない。火がついたら止まらない山賊打線を持っているチームなだけに、試合を決するきっかけになった攻防がもったいなかった。

「先に点を取られる。点を取ってもらった後に取られる。やってはいけない野球のセオリー」

トミー・ジョン手術を経験し、育成から返り咲いた與座は開幕から2試合続けて6回3失点と粘投。この日も1回以外は走者を背負う展開ながら、しぶとく援護を待つ投球を続けていた。ただ、内容を詳しく見てると、過去2戦はいずれも先制を許しており、この日は先制してもらった直後に2ランを浴びて逆転を許した。

「先に点を取られる。点を取ってもらった後に取られる。やってはいけない野球のセオリーですし、勝てない投手の“あるある”的な部分でもあります」

さらに野口氏は、球が低めに集まりがちなアンダースロー投手ならではの配球面も指摘。打者の目先を変えるための効果的な高めの球を、森友哉捕手がしばしば要求してきた点は評価しつつも「あとはインコース。捨て球にするにしても、ファウルをとるにしても、打者の目線をインコースにも向けさせることが大事。そうすれば投球の幅も広がってくると思います」と話した。

3度目の正直とはいかなかったが、與座は球数を消費しながらもテンポよく投げ込み「全体的にはいいピッチングをしていたと思います」と野口氏もうなずいた。この教訓を生かし、課題を乗り越えた先には、待望の初星が待っているはずだ。(小西亮 / Ryo Konishi)

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